【愛知県武豊町】
南蔵商店
愛知県武豊町で味噌とたまりの醸造頑として明治5年創業。
醤油は自然がつくるもので、人が関与できる余地は少しだけ。ただ、そのわずかに最大限貢献できるように向き合う南蔵商店は、麹づくりに全力を注ぎます。
伝承された知識と技術に科学的データを加えて
温暖な気候とミネラルを豊富に含む良質な硬水が湧き出る知多半島では、古くから酒や溜醤油、豆味噌などの醸造業が盛んでした。明治以降、鉄道の開通や武豊港の開港により発展していった武豊には、多くの溜醤油・豆味噌蔵が集中して生まれたのです。最盛期には50軒ほどあった蔵ですが、昭和に入ると戦争による経営難や戦後の欧米食文化の浸透により年々減少し、現在は6軒ほど。南蔵商店は古くからの杉桶を使い続け、先人から伝承された知識と技術・製法に加え、科学的データと麹を割った時の感覚とを照らし合わせながら、よりよい溜醤油と豆味噌作りを続けています。
二夏を越し、あしかけ3年じっくり発酵熟成
溜醤油は熟成期間が長くて仕込み水が少ないのが特徴。南蔵では大きく分けて2種類の仕込みをしています。塩水量の違いで、麹を100としたときに塩水が50か100か。重石をのせ、二夏を越し、あしかけ3年じっくり発酵熟成させることで、大豆の旨味と栄養が引き出され、独特の風味が生まれます。諸味から液体にする工程も2種類に分かれます。底にたまった液体そのままの「生引溜」と、生引きを引いた後の残った諸味を圧搾機にかけた「圧搾溜」。最も重要な麹づくりは、職人としての勘や経験の裏付けとして、過去の天気から浸漬時間・蒸し時間までのデータの蓄積もしています。
濃厚な赤褐色で見た目もきれいです
黒くドロッとしたイメージがある溜醤油ですが、南蔵商店が作る溜醤油は濃厚な赤褐色で見た目もきれいです。国産丸大豆(愛知)と天日塩のみを原料とし、創業時から145年以上使用している木桶で足掛け3年の時をかけて熟成。原料大豆に対して、水を半量しか使わない「五分仕込み」という方法で仕込んでいるため、濃厚でありつつ、まろやかな味わいです。たまりでしか味わえないコクと香り、小麦を一切使用していないこと(グルテンフリー)が国内にとどまらず、海外の方々にも評価されています。
青木弥右衛門
グルテンフリー醤油として溜醤油が注目をいただいていますが、小麦が入っていないだけで評価されるのは違うと思うんです。大前提として美味しくないといけない。私たちはそこを忘れてはいけないと思います。