専売制度の下で始まった塩づくり
土佐のあまみ屋を運営する小島氏は、もともと高知市内で自然保護活動に参加していました。塩づくりは美しい海水があってこそ。そして美しい海水は豊かな山と川があって育まれます。自然保護活動のひとつの形として塩づくりを始めることを決意し、県内をあちこち探して、ようやく土地を貸していただける地主さんに出会えたそうです。その場所は、豊かな山を背に眼前に美しい海が広がる塩づくりには最適な場所でした。1982年、まだ専売制度が施行されている最中に、塩づくりが始まりました。当時は法律で政府が認可した7社以外が塩の販売をすることが禁じられていたため、会員への配布という形で塩が広がっていきました。
火を使わずに、自然の力だけで塩を育てる
塩の製法はさまざまある中で、小島氏が選んだのは火や燃料を一切使わずに、太陽と風の力だけで海水を濃縮・結晶させる完全天日塩でした。高い位置からネットをタワー状に汲み上げ、そこに海水をかけ流して濃縮したのち、ハウスの中にずらりと並んだ小さな箱の中に濃縮海水をいれ、あとは太陽と風の力だけで結晶させていきます。釜で煮詰めるよりも長い時間がかかるため、生産量は多くはありません。日々、塩の成長を見守りながら、1つ1つ自分の子供のように手をかけて育てていきます。この製法であれば、CO2を排出することもなく、環境に優しい塩づくりをすることができるので、自然保護活動の一環として最適な製法とも言えます。
技術と想いを惜しげもなくシェアする
手に入れた技術を人に教えるということは、ライバルを作るということにもなるため、なかなか実践しようと思ってもできることではありません。しかし小島氏は、自分で築き上げた技術を惜しげもなく人に教えてきました。それは、「塩づくりを通じて環境保全の輪を広げたい」という想いがあるからです。そういった小島氏の想いが実り、今や高知県は天日塩づくりの聖地とも言えるほど、完全天日塩づくりに従事する製塩事業者が多い県になりました。今後も、塩づくりを通じて、豊かな高知県の自然が守られていくことでしょう。
塩職人 小島 正明
火力を使っていないので、お天気次第でのんびりと塩の結晶が育ちます。美しい海の恵みを皆様にお届けできることに感謝し、いつまでも美しい海でありますように祈りを込めて塩作りに励んでいます。お天気次第の塩づくりなので、これからもお天道様に従い、丁寧に手作業で塩づくりをしていきたいです。現在、息子も一緒に塩づくりを始めています。若い力の活躍も楽しみにしています。
土佐のあまみ屋の商品
tabishio select さかなのしお
人が生きる上で欠かせない塩の生かし方を研究し、塩に関するプロの育成も行なっているソルトコーディネーター・青山志穂さん。そんな塩のプロがおすすめする、魚本来の味わいを引き出す4種類の塩のセットです。
tabishio select ぶたととりのしお
塩の特性や生かし方を研究し、塩に関する正しい知識の普及にも努めるソルトコーディネーター・青山志穂さんが、食卓に上ることの多い豚肉と鶏肉のおいしさを引き出す塩を4つセレクト。毎日の食を豊かにする塩です。