料理人の視点で「海水を調理する」塩づくり
日本のウユニ塩湖とも称され、近年では観光スポットとしても大人気の父母ヶ浜を目の前に臨む「カフェ フロ」を営む料理人の浪越さん。カフェには、製塩施設が併設されており、塩づくりも行われています。原料は瀬戸内海の満潮になる1時間前ぐらいの海水。このタイミングが重要だそう。そして山の環境を守るために地域で出る多種多様な間伐材を薪として使用し、薪の種類によって調整を加えながら火を操り、じっくり煮詰めていきます。仕上げ段階になると、その時々の湿度や温度、塩の状態に合わせてさらに微妙に火加減を調整し、仕上げていきます。その様子はまるで、上質のスープを仕上げる料理人の姿そのものです。
慣れ親しんだ地元の海の味そのもの
三豊市はかつては塩業が盛んで、海沿いには塩田が広がっており、屈強な男たちが塩田で汗を流す姿が原風景としてありました。そんな町で生まれ育った浪越さんは、地域でカフェを営みながら、懐かしそうに昔の製塩を語る地域の人たちの話を聞いて、「料理人なので、塩を作っても無駄にはならないだろう」と、試しに海水を煮詰めて塩を作ってみたそうです。できあがった塩は、自分が小さい頃から慣れ親しんできた地元の海の味そのもの。「これならばこの海で育った魚や野菜にきっと寄り添える塩になるのではないだろうか」と思い、料理人ならではの塩づくりを追求することにしたそうです。そこから試行錯誤を繰り返し、理想的な塩が出来上がるようになりました。
塩と薪と食を通じて地域全体の活性化と発展に真剣に取り組む
豊かな海は豊かな山から育まれます。海水が原料である塩をよりおいしくするためには、海の状態がより良くなることが必要で、そのためには山の状態がより良くならないといけません。塩づくりを俯瞰して捉える浪越さんは、山林事業者や他のエリアの事業者たちとも密接に連携して、自然環境を適した状態にしていく活動にも取り組んでいます。また、薪を囲んでロングテーブルで食を供にし団欒できる日本初の薪火グリル付きホステル「クーベル」もオープン。食に関わる人間として自家製塩を使った薪火料理を通じて人と人を繋げながら、人の健康に塩がとても重要な役割をすることを伝えています。
塩職人・料理人
浪越 弘行
日本国内だけでも多種多様な塩があり、どれが一番というものはないと思っています。お肉にはこの塩、サラダにはこの塩、おむすびにはこの塩と個性を考えながら使い分けて日々の食卓を楽しんでいただけるととても嬉しいです。
浪越弘行の商品
tabishio select ごはんのしお
ソルトコーディネーター・青山志穂さんは、科学的根拠や官能検査によって塩をデータベース化し、最適な使い方を研究しています。後進の育成や塩専門店も営む青山さんが厳選した、お米をよりおいしく食べるための塩。