周辺の山々の恵に育まれた豊かな海から海水を取水
海水を汲み上げる場所は、神々が住むと言われている噴火湾(洞爺湖町)の沖合100m、深さ20mの地点。その海水を薪で熱した平釜で約14時間、塩職人が火加減を微妙に調整しながら、じっくり煮詰めて濃縮・結晶させていくと、塩ができあがります。噴火湾の名は周辺に活火山が多いことから名付けられましたが、この湾には周辺を囲む道南の山々からの栄養をたっぷり取り込んだ多くの河川が流れ込んでいるため、植物性プランクトンが豊富で、多様な生物が生息する非常に豊かな海域で、塩づくりにはうってつけの場所と言えます。
異業種から新規事業として製塩に参入
北海道を中心に土木関連の設計業務を生業としていた企業が、リーマンショックをきっかけに新規事業の創出として2005年に製塩事業をスタート。屋号「工房 帆」を掲げ、真冬には氷点下になる極寒の地での製塩に取り組むこととなりました。試行錯誤の末できあがった塩は、星付フレンチレストランシェフもその味に惚れ込み愛用したりと、またたくまに好評を得ることとなりました。諸事情により2021年に一旦事業休止となりましたが、「やめないで!」という全国各地からのファンの声に支えられて、兄弟会社でもある炉を取り扱う同社が業務を引継ぎ、その味を守っていくことになりました。
極寒の地での塩づくり
手つかずの自然も多く残り、豊かな山に育まれた豊かな海があるとはいえ、北海道は塩づくりにとって有利な地域とは言えません。洞爺湖町の年間日照時間は短く、年間を通じて雨が非常に多い地域でもあります。さらに近年では台風も多く襲来しています。しかも冬になれば気温は氷点下となるため、海水を煮詰めて沸点まで持って行きそれを持続するためには、温暖な地域と比べると倍近いエネルギーが必要となるからです。それにも関わらず、北海道の一次産業に貢献しようと洞爺湖の豊かな自然を活かした塩づくりに取り組んでいること自体が、とても貴重でチャレンジングなことではないでしょうか。
塩製造部門 担当
渡邊 尚久
わたしたちの塩づくりのコンセプトは「主役にはなれなくても、名脇役として存在できる塩」です。家庭から飲食店まで幅広くご愛顧いただいている自慢の塩を、ぜひ一度お試しいただけたら嬉しいです。
東洋炉材株式会社 工房帆の商品
tabishio select ごはんのしお
ソルトコーディネーター・青山志穂さんは、科学的根拠や官能検査によって塩をデータベース化し、最適な使い方を研究しています。後進の育成や塩専門店も営む青山さんが厳選した、お米をよりおいしく食べるための塩。