伊藤雅風

【愛知県常滑市】

伊藤雅風

愛知県常滑市の陶芸家・伊藤雅風さんは、常滑焼の代表ともいえる急須のスペシャリスト。
毎日欠かさない土づくりに始まり、自家製の土の表情をそのまま生かした作風が特徴です。
目指したのは、お茶を淹れたくなるような急須。シンプルでありながら高い精度を誇る、
オールドスタイルの常滑焼を極め続けています。

土の味わいをそのまま生かした、
オールドスタイルの常滑焼を追求しています

土の味わいをそのまま生かした、
オールドスタイルの常滑焼を追求しています

日本六古窯の1つである愛知県常滑市は、平安時代末期から「常滑焼」の産地として栄えてきた歴史を持つ焼き物の街です。焼き上がりに美しい朱色を発色することから「朱泥」と呼ばれる、鉄分を含有した陶土を用いるのを特徴とする常滑焼ですが、その代表的な工芸品の1つが急須です。この地で生まれ育った伊藤雅風さんは、学生時代から急須作りの技術を磨き続ける陶芸家。自ら土づくりから行い、釉薬を使わずに土の表情をそのまま生かす「焼き締め」という手法で追求するのは、江戸時代後期に見られたような、オールドスタイルの常滑焼。思わず、丁寧にお茶を淹れたくなる——伊藤さんが目指したのは、精巧な技術力に裏打ちされたクラシックな急須でした。

1日の始まりは、土づくりから。
3年以上寝かせた、自家製の土を使っています

1日の始まりは、土づくりから。
3年以上寝かせた、自家製の土を使っています

急須づくりを極めるにあたり、伊藤さんが着目したのは土づくりでした。現在の常滑焼では仕上がりが安定しやすいブレンドした朱泥が主流ですが、伊藤さんは昔ながらの「本朱泥」にこだわり、江戸時代後期に実施されていた「水簸(すいひ)」という製法で土を作っています。水の入った甕に原土を入れて撹拌し、少し時間をおき上澄みに残ったきめ細かい粘土をさらに細かい篩に通して収集。この地道な力仕事を1日1回、毎日欠かさず1年間続けます。このように集め続けた粘土を素焼甕に移したら3~6カ月間かけてじっくり水分を抜き、さらに3〜5年程度寝かせると、ようやく原料として使うことができます。釉薬を用いない「焼き締め」で作る急須は陶土の質が仕上がりを左右しますが、土づくりから行うことで、好みの質感や色味を追求することができるのです。

昔ながらの手法をアレンジするなど、
斬新なアプローチも魅力の1つです

昔ながらの手法をアレンジするなど、
斬新なアプローチも魅力の1つです

土からこだわり、オールドスタイルの常滑急須を極める伊藤さん。その一方で、新たな制作手法や新発想な企画にも積極的に挑戦しています。朱泥に異なる陶土を少々ブレンドしたり、昔ながらの焼成方法を工夫して好みの質感を追求したり。また、素地に海藻を巻き付けて焼くことで模様を生み出す常滑特有の「藻掛け(もがけ)」という技法がありますが、伊藤さんはこの技法にも自分なりのアレンジを施しています。昔ながらの技法をそのままなぞるのではなく誰もやっていないことを、と最近始めたのが、海藻の代わりに杉の葉を巻き付けて焼成するという方法。クラシックな佇まいの中に尖ったセンスが光るのも、伊藤さんの急須の魅力です。さらに、急須を用いたお茶の時間をより多くの人に楽しんでもらうきっかけになればと、急須を使った斬新なアプローチを実施。お茶の生産地の土を用いて急須を作るという試みや、SNSで募って送ってもらった土を急須に仕上げてお返しするなどといったユニークな取り組みも行っています。王道を極めんとするストイックな姿勢と軽やかなフットワークを合わせ持つ伊藤さんの作品は、この先も進化し続けていきます。

伊藤雅風

急須屋

伊藤雅風

常滑の土の性質が急須づくりに向いていることも、焼き物が発展した理由の1つです。また常滑急須は、陶土に含まれる鉄分がお茶の渋みや苦みをまろやかにする効果もあります。“育てる急須”とも言われるほど、使い続けるとツヤが出てきてえも言われぬいい色合いになっていくので、ぜひ毎日お茶を飲んで、たくさん使ってくださいね。

伊藤雅風の商品

黒泥急須 - にほんものストア
売り切れ

黒泥急須

自ら作った土を使い、オールドスタイルの常滑急須をストイックに極める愛知県常滑市の陶芸家・伊藤雅風さんが手がけた急須。還元焼成することで、重厚感ある黒色と金属のような艶のある質感を表現しています。

¥23,100(税込)
朱泥急須 - にほんものストア
売り切れ

朱泥急須

昔ながらの製法で自家製の土を作り、オールドスタイルの常滑急須を追求する愛知県常滑市の陶芸家・伊藤雅風さんが、朱泥本来の美しさにこだわった急須がこちら。「焼き締め」という技法で生かした土味が魅力です。

¥23,100(税込)