【沖縄県伊江村】
伊江島製塩
沖縄本島北部から約9kmほどの位置にある、島の東にそびえ立つ「タッチュー(城山)」が目印でもある伊江島。
人口約4000名ほどの小さなこの島で、工夫を凝らした塩作りが行われています。
伊江島の恵みを存分に活かした塩作り
この塩の原料となる海水が汲み上げられるのは、「湧出(ワジー)」と呼ばれる場所です。ここは地下水が湧き出ているスポットで、水不足に陥りやすい離島における重要な飲用水の取水場所として、古くから住民に大切にされてきました。地下水は海底からも湧き出ており、あえてここの海水を利用しています。海水に淡水が混じるので塩分濃度が薄くなるため製塩効率は悪くなりますが、塩職人の千葉さんは「伊江島ならではのみんなから大事にされている場所だし、地下水には地上の栄養も含まれるから、ここががいい。琉球石灰岩の影響でカルシウムがすごく多くなる。」と言います。その影響か、できあがる塩は力強さを持ちつつ甘味を感じさせます。
他の離島には塩があるのに、伊江島にはない。ならば、作ろう
沖縄県外から移住してきた千葉さん。当時は島で飲食店をやったり黒糖を育てたりしながら、なにか島の名産になるものはできないか考えていました。その時に「ほかの沖縄の島では塩が作られていて島の名産品になっているのに、伊江島にはない」ことに気がつきます。そこで、独学で塩づくりを研究し、塩作りをスタート。数年の試行錯誤を経て、これならば、と思える塩が完成しました。独自の工夫が至るところに凝らされた製塩場では、完全天日塩と釜炊きの2種類の塩を作り分けています。2018年にはにがりを活用した「にがり足湯」もオープン。千葉さんは齢80歳を迎えますが、「まだまだ研究途中。これからもっと良くしていきたい」と、改善の手は止まりません。
幾度の台風による倒壊にも挫けない気持ち。ファンでいてくれる人のために
2013年に相次いで襲来した大型台風によって、千葉さんの製塩所は壊滅的な打撃を受けました。「台風が収まって様子を見に行ったら、製塩所の屋根が海の向こう側まで飛ばされてたよ。もちろん、作っていた塩も全部飛ばされた」というほど壮絶な被害状況でした。「自分も年だし、もう辞めようかと思ったけど、ファンになってくれた人たち1人1人に『辞めます』って言えないし、申し訳ないし、言っても『辞めないで』って言われるから。だから、もうちょっと頑張ろうと思って」という想いで、またゼロの状態から製塩所を再建。現在でも、活発に新商品開発もしながら、伊江島の恵みを活かした塩作りを続けています。
伊江島製塩 塩職人
千葉武夫
歳を取ってから始めた塩づくりだけど、お客さんがおいしいと言ってくれるのが嬉しくて、ここまで続けてこられました。これからやりたいこともたくさんあるけど、後継者がいないので、塩作りをしたい人を募集しています。
伊江島製塩の商品
tabishio select しおのほうせきばこ
塩の特性を官能検査や科学的根拠に基づいて分析し、その最適な活用方法を研究しているソルトコーディネーター・青山志穂さんが、塩の形状に着目して厳選した4種の塩のセット。塩が織りなす多彩な食感を楽しめます。