第11回 麻婆豆腐と炒飯(チャーハン)にぴったりなお米

〜 第11回 〜
麻婆豆腐と炒飯(チャーハン)にぴったりなお米

株式会社山田屋本店 秋沢毬衣

株式会社山田屋本店 秋沢毬衣
五つ星お米マイスター、米・食味鑑定士。東京都調布市にある株式会社山田屋本店の6代目。全国の田んぼを訪問し、日本の精密かつ受け継がれゆく米作りや生産者の想いを国内外へ発信。お米の専門店「米屋彦太郎」を運営し、お米館調布本店・三越銀座店に出店している。

こんにちは。米屋の娘6代目の秋沢毬衣です。自分好みのお米を見つけるお手伝いをいたします。今回は、中華料理にぴったりのご飯をご紹介します。

中華料理は、お米との相性が良いおかずが多いですよね。当店では中華料理店からのオーダーが入った際には、「炊飯の器具」「一度にどれくらいの量を炊くか」「お昼の定食の有無」などをお聞きして、条件に合うお米を提案しています。今回は、中華料理の中から「麻婆豆腐」と「炒飯(チャーハン)」にフォーカスした少し贅沢な提案になりますが、中華料理店の店主になった気分でご飯を選んでみてくださいね。
前回まではこちら

“麻婆豆腐”と相性が良いお米【粒肌がしっかり、程よく粘りあるお米】

中華料理のなかでもご飯との相性が抜群なのが麻婆豆腐。麻婆豆腐を一口食べたらご飯を頬張り、また麻婆豆腐を一口、とご飯がとにかく進みますよね。中華料理のご飯は、味付けが濃いなどを理由に、少し古くパサパサになったお米でも関係ないと思われがちですが、ご飯あってこそのおかずです。おかずと一緒に口にいれた時のことを考えて選ぶとより美味しさが引き立ちます。麻婆豆腐のような味が濃くスパイシーなおかずには、しっかりとした粒感と、保水性のあるお米がおすすめです。これまでに紹介したお米でいうと「星空舞」や「元気つくし」などが該当します。

“麻婆豆腐”と相性が良いお米【粒肌がしっかり、程よく粘りあるお米】

“炒飯”と相性が良いお米【粒感がしっかり、粘り気が少ないさらりとしたお米】

中華料理でお米がメインの料理と言えば「炒飯(チャーハン)」。パラパラの炒飯を作りたい!というのが、炒飯における永遠のテーマではないでしょうか。水を少なめにして炊く、温かいご飯を炒める前に卵でとじておくなど、様々な工夫でパラパラに挑戦されていることと思います。米屋の娘からのアドバイスは「炒飯に合うお米」を選ぶこと。高温で炒める炒飯には、硬めの粘り気が少ないさらりとしたお米がおすすめです。これまでに紹介したお米でいうと「たかたのゆめ」などがおすすめです。

“炒飯”と相性が良いお米【粒感がしっかり、】

米屋の娘のおすすめ「パラパラ炒飯」の作り方

① 中華に適したお米を選ぶ。※お米選びは、上記を参考にしてください
② 普通の固さになるように炊く。
③ 炊き上がったらバットなどに平たくご飯をひろげ、冷蔵庫で1日程度寝かす。
④ 寝かせたお米を炒めて炒飯をつくる。寝かせておくことで米肌の水分が飛び、脂の絡みがよく、パラパラに仕上がります!

米屋の娘のおすすめ「パラパラ炒飯」の作り方

お米マスターが選ぶ、麻婆豆腐と炒飯(チャーハン)にぴったりなお米

〜 その1 〜
特別栽培米青森県産 青天の霹靂/葛西 拓美(青森県つがる市)

厳しい栽培条件と食味値の基準が設けられ、おいしい米作りを県内全体で取り組んでいます。

「青天の霹靂」は、2015年に流星の如くデビューした新品種です。誰もが驚くような旨さを目指し、10年もの歳月をかけて北国特有の低温に耐性があり食味のよい米を開発することに成功しました。青天の霹靂の特長は、しっかりと大きめの粒はきりりと際立ち、頬張ると口の中で心地よくほどけ、後味のキレが良いところ。味付けの濃い中華料理には、このさっぱりとした粒感とキレが心地よく、ついもう一口と箸が進みます。

2015年から7年連続特A評価

青天の霹靂は、日本穀物検定協会の食味ランキングで最高評価である特A評価を青森県産史上初めて獲得し、デビューから7年もの間、連続特A評価を取り続けています。タンパク質が多いと、炊飯時に米の吸水を阻害しパサパサとしたお米になり、食味が低下すると言われています。一般的なお米のタンパク質含有率の平均は6.8%ですが、青天の霹靂のタンパク質含有率は6.4%以下に制限されています。出穂の直前に撒く窒素肥料を管理し、タンパク質含有量を調整することで、青天の霹靂特有のしっかりとした粒感と程よい粘りを生み出しています。

米屋の目利き力で米作づくりにチャレンジ。

収穫後のお米の乾燥は、2週間かけてじっくりと

お米は収穫後、もみの状態で乾燥させます。刈取り後のお米には、20~25%程度の水分があり、通常は一晩で15%程度の水分量に落としていきます。葛西さんは、2週間ほどかけてゆっくりと送風乾燥させています。そうすることでお米が割れず、きれいな粒感に仕上がります。

日本一早い新米「ミルキーサマー」
有限会社山七 代表 山田義哲

自然の乾燥に近く、ゆっくりとお米を乾燥させて、見ても美しく食べて美味しいお米に仕上げました。

葛西 拓美

〜 その2 〜
新潟県北魚沼産 こしいぶき/農事組合法人グループファーム武道窪(新潟県長岡市)

炒めてもべちゃっとしないので炒飯はもちろん、どんぶり飯にも適しています。他のお米にはない、米の存在感を感じますよ。

新潟県北魚沼地区は、昔から米づくりに非常に適した産地として全国的にも有名ですが、その環境におごらず、日々ひた向きに美味しいお米を作り続けています。「こしいぶき」は、コシヒカリを親にもつ「ひとめぼれ」と「どまんなか」の交配によって生まれた新潟県の新品種で、コシヒカリと並ぶ新潟県の基幹品種として定着しています。コシヒカリと比べて、硬めの粒感とあっさりとした粘りが特長で、冷めても硬くならずおいしさが持続します。

長い冬が生み出す豊かな土壌

北魚沼地区は、2,000メートル級の越後三山に囲まれた新潟県内でも有数の豪雪地帯で、冬が長く4月中旬まで田んぼが雪に覆われているところもあります。春の訪れが遅くなる分、土が休んでいる期間が長くなり、吸収力のある良い土が育まれます。春の田おこしでは、15センチ近くまで掘り起こし根の張りを良くします。6月の中干し期(田んぼから水を抜く)に、地中の養分の吸収を抑えて余計な分げつ(茎が増えること)を減らします。温暖化の影響で夏場には、日中の気温が35度を超える日もありますが、周囲の山々のおかげで、夜は急激に気温が下がります。この昼夜の寒暖差が、特に穂が出た秋においてお米の登熟につながっています。

「畑の貯水池」から流れ出る良質な水

コシヒカリと作期分散し品質管理を徹底

こしいぶきは、刈取り時の稲の高さがコシヒカリより10センチほど低く稲の倒伏も少ないので収穫量も安定しています。北魚沼地区は、コシヒカリの産地であり、栽培面積が多いため作業・収穫を適期に行うために早生品種を導入し、作期分散を図ることで品質を良くするための工夫をしています。

毎日田んぼに出向き、稲の状況を確認
JA北九 稲作部会 元気つくし研究会 班長 野村武文

田んぼの見回りを欠かさず、基本技術を徹底して行い、昨今の異常気象に負けない米づくりを実践しています!

農事組合法人グループファーム武道窪(ぶどうくぼ)
阿部 晴夫