第16回 握りずし・巻きずしにぴったりなお米

〜 第16回 〜
握りずし・巻きずしにぴったりなお米

株式会社山田屋本店 秋沢毬衣

株式会社山田屋本店 秋沢毬衣
五つ星お米マイスター、米・食味鑑定士。東京都調布市にある株式会社山田屋本店の6代目。全国の田んぼを訪問し、日本の精密かつ受け継がれゆく米作りや生産者の想いを国内外へ発信。お米の専門店「米屋彦太郎」を運営し、お米館調布本店・三越銀座店に出店している。

こんにちは。米屋の娘6代目の秋沢毬衣です。自分好みのお米を見つけるお手伝いをいたします。「ハレの日のごちそう」といえば「お寿司(すし)」。握り、押し、ちらし、巻きなど、日本全国に様々な種類のおすしがあります。今回は、お家でおすしを作る際に、ワンランクアップする「握りずし・巻きずしに合うお米」をご紹介いたします。
前回まではこちら

おすしに合うお米の選び方とは?

おすしに使うお米と言えば、昔は「ササニシキ」が代表格でしたが、ササニシキは冷害と高温障害に弱く、近年では生産量が減っています。当店では、すし屋さんからオーダーが入った際には、板前さんの目指すおすしをお聞きして条件に合うお米を提案しています。例えば、「全体的に口当たりが優しくふわっとした軽いすしを作りたい」という場合は、ふわっとした食感で粒感のある「つや姫」、「米の食感や甘みのある米が欲しい」という場合は、万能な粒感と甘みのある「コシヒカリ」、ササニシキの味わいを引き継ぐ後継品種「ささ結」などを提案します。単一品種で板前さんのオーダーに応えることが難しい場合は、2種類以上の米を掛け合わせてオーダーメイドのブレント米を仕立てることもあります。 一般家庭でおすしを作る際には、おすしの種類に合わせてお米を選ぶのがおすすめです。

おすしに合うお米の選び方とは?

「握りずし」「手巻きずし」「巻きずし」におすすめのお米

一般的におすしには、お酢に砂糖や塩を加えた「すし酢」でお米に味付けをした「酢飯」が使われています。「酢」には、生臭さを軽減したり、雑菌の繁殖を抑えて腐りにくくしたりする殺菌効果や防腐作用があります。また、すし酢に含まれる砂糖が、米の主成分であるデンプンに含まれる水分と結びついて「糊化」している状態を保つため、「酢飯」にすることで時間が経ってもご飯が硬くなりにくくなります。酢飯を作る際には、「すし酢」の砂糖や塩、だしの配合比率がフォーカスされますが、一言で「すし」と言っても、握りずしや手巻きずし、巻きずしなど、おすしによって調理・加工方法が異なるので、その特性にあわせてお米を選ぶとよりおいしく仕上がります。

米屋の娘のおすすめ「おすしの種類別 おすすめのお米の選び方」

握りずしには、あっさり味でサラッとしている「銀河のしずく」「たかたのゆめ」「ミネアサヒ」
握りずしには、お米自体の味が主張しすぎない、あっさり味でサラッとしているお米がおすすめです。粘り気が強いお米は、べちゃっとしてしまうので、避けた方が良いです。

手巻きずしには、ふわっとした食感で具材を引き立てる「コシヒカリ」「つや姫」「いちほまれ」
手巻きずしは、ふわっとした食感で、具材を引き立てるお米がおすすめです。手のひらに海苔をのせて酢飯を広げ、その上に具材をのせたら軽く包んだら口内へ。口の中でふわっとほどける食感が具材を引き立てます。

巻きずしには、粒感のはっきりした「雪若丸」「青天の霹靂」「さがびより」
ご飯と具材をしっかりと押さえて巻き込む「巻きずし」には、粒感のはっきりした品種がおすすめです。具材の食感に負けない粒感があると、具材を引き立てながらも米の粒感も堪能できるので食べ応えのある巻きずしに仕上がります。


おいしい酢飯の作り方

米マスターのおすすめコメント

シャリ切りは、必ず炊きたての熱いご飯を使用するのがポイント。しゃもじで底から酢飯をすくい、横に切るように細かく動かしましょう。

1. お米を炊くときの水加減は、寿司酢を入れる分だけ水を減らして炊く。
※少し硬いかなと思うくらいでも大丈夫。

2. 炊きたてのご飯に、寿司酢をしゃもじに伝わせるようにして、全体に回しかける。
※寿司桶がなければ大きめのボウルや鍋でもOK。

3. うちわであおいで余分な水分を飛ばしたら、つやのあるおいしい酢飯の完成。
※すぐに使用しないときは、水で濡らしよく絞ったふきんをかけると乾燥を防ぐことができます。

おいしい酢飯の作り方

お米マスターが選ぶ、握りずし・巻きずしにぴったりなお米

〜 握りずしにぴったり 〜
ささ結(東北194号)|関 孝浩(宮城県大崎市)

粒肌が柔らかく、あっさりとした粘りと軽やかな口当たりは、握りずしにぴったりです。

「ささ結(東北194号)」は、宮城県古川農業試験場で「ササニシキ」を母、「ひとめぼれ」を父として2001年に交配され、2012年に「東北194号」として品種登録されました。さっぱり系の代表格で東の横綱とも称される人気品種だった「ササニシキ」ですが、冷害と高温障害に弱く、近年では、冷害に強い他品種への作付け変更などから生産量が激減していました。生産量が減少する一方で、料亭やすし屋の職人などからはササニシキの復活を望む声が多く寄せられていました。そこで数々の有名銘柄を生み出し、ササニシキのふるさとでもある宮城県古川農業試験場が品種改良に着手、ササニシキの食味を残しながら、冷害に強く高温耐性のある品種へと改良しました。中でも宮城県大崎市の「大崎耕土」で栽培され、厳しい基準をクリアしたお米は「ささ結(むすび)」の名でブランド化しています。炊きあがりの香りと色つやに優れ、粘りはひかえめ。食感はあっさりとして、口のなかでほぐれやすく、粒はふっくらとして、冷めても硬くなりにくい。おすしに抜群の適性を発揮し、プロの板前さんからも高く評価をされています。

世界農業遺産に認定された「大崎耕土」

宮城県北部の大崎地方には、「大崎耕土(こうど)」と呼ばれる奥羽山脈から流れる江合川と鳴瀬川の豊かな水に恵まれた肥沃な平野が広がっています。江戸時代、この地で作られた米は「本石米(ほんごくまい)」と呼ばれ、江戸の米消費量の三分の一を担っていたとも伝えられています。2017年には、巧みな水管理による水田システムが認められ、国際連合食料農業機関(FAO)によって「世界農業遺産(GIAHS)」に認定されました。

「新食感の粒感創り出す」プロジェクト

美しいシャリを目指してささ王に輝く

宮城県大崎市では、2017年から同地で誕生した「ササニシキ」およびササニシキ直系ブランド米「ささ結」のNO.1を決めるコンテスト「全国ササニシキ系『ささ王』決定戦」を開催しており、今年は、関孝浩さんが見事金賞に選ばれました。関さんは、美しいシャリを実現するために、お米の整粒歩合のほか、炊き上がりのべちゃ付きの原因にもなる「胴割れ」を防ぐことに注意し、基本に忠実に栽培する事で、美しい見た目と良食味のお米を育んでいます。

雄大な自然環境が育むお米
関 孝浩

ささ結は、宮城県大崎耕土で栽培の基準値を設けて作られたブランド米だからこそ作り甲斐があります。みなさんにおいしく食べてもらいたいです。

関 孝浩

〜 巻きずしにぴったり 〜
雪若丸|JAおいしいもがみ(山形県新庄市)

しっかりとした粒感、あっさりとした粘りは、巻きずしにぴったりです。

「雪若丸」は、「山形80号」と「山形90号」を両親として2018年に15年の歳月かけて、山形県農業総合研究センター水田農業研究所で誕生しました。しっかりした粒感や稲姿(いなすがた)などが男性的であること、際立つ白さとつやのある外観が雪のように美しく、また、白さとつやの特長が「つや姫」に似ているので、つや姫の弟をイメージさせる「雪若丸」と名付けられました。雪若丸の最大の特長は、適度な粘りと一粒一粒がしっかりと立った噛みごたえが両立している新食感です。このキレのある粒感とあっさりとした粘りは、すしやカレー、チャーハンやピラフなどとの相性が抜群です。特に、すし酢を米粒に絡ませるとなじみ良く、べちゃっとならずに米粒がしっかりと立ちます。また、海苔で酢飯とさまざまな具材を巻く「太巻きずし」に仕上げると、具材の食感に負けないしっかりした粒感も感じられるので、具材を引き立てながらも米の粒感も堪能できるのでおすすめです。

「新食感の粒感創り出す」プロジェクト

山形県を代表するブランド米として全国的にも有名な「つや姫」の弟分として、デビューしたのが「雪若丸」です。雪若丸の栽培特性は、稲の背丈が短く、倒伏しづらいこと。また、1本の穂につく籾(もみ)の数が少なく、一粒が大きくそろった米粒になりやすいので、食べごたえのある食感が特長です。そんなボリューム感、粒感をイメージして、育ち盛りの学生さんや体育会系の方にたっぷりと食べてもらいたいという、米どころならではの願いも感じられます。

「新食感の粒感創り出す」プロジェクト

雄大な自然環境が育むお米

山形県北東の内陸部に位置する最上地域は、周囲を高く険しい山々に囲まれ、総面積に対する森林の割合が8割近くを占めています。東部には神室山(1,365m)に代表される奥羽山脈、西部には鳥海山(2,236m)、月山(1,984m)に代表される出羽山地、さらに、北部は加無山(997m)に代表される加無山県立自然公園など、山々に囲まれています。夏は高温多湿で昼夜の寒暖差が10度以上もある盆地の特長を活かし、お米の甘みを引き出しています。

雄大な自然環境が育むお米
JAおいしいもがみ

一生懸命につくったお米です。おいしくお召し上がりください。

JAおいしいもがみ