第6回 カレーにぴったりのお米
〜 第6回 〜
カレーにぴったりのお米
株式会社山田屋本店 秋沢毬衣
五つ星お米マイスター、米・食味鑑定士。東京都調布市にある株式会社山田屋本店の6代目。全国の田んぼを訪問し、日本の精密かつ受け継がれゆく米作りや生産者の想いを国内外へ発信。お米の専門店「米屋彦太郎」を運営し、お米館調布本店・三越銀座店に出店している。
こんにちは。米屋の娘6代目の秋沢毬衣です。自分好みのお米を見つけるお手伝いをいたします。今回は、「カレーにぴったりのお米」です。カレーと言っても、様々なタイプのカレーがありますが、「ビーフカレー」と「キーマカレー」に焦点を当ててご紹介したいと思います。
前回まではこちら
目次
“ビーフカレー”と相性が良いお米
カレーの中でも、トロリとした汁感のあるルーを楽しむカレーには、カレールーが米の粒を覆い、ルーとライスの一体感を楽しめるお米を選びましょう。つまり、お米の粒がしっかりとした食感のもの。例えば、「つや姫」「いちほまれ」「青天の霹靂」「新之助」などの粒肌が比較的パリッと張りのあるお米がおススメです。また、程よく粘りを感じられるものを選ぶと、口内調味によってお米の甘みとルーの馴染みが良く感じられます。
“キーマカレー”と相性が良いお米
キーマカレーの「キーマ」は、インドの言葉で「ひき肉」という意味。ひき肉のほかに玉ねぎ、にんじん、にんにく、トマトなどを具材にした汁気の少ないカレーです。
前述のトロリとしたカレーとは異なり、具材の食感とカレーのスパイスを噛みしめて楽しむカレーですから、お米はしっかりめよりは、具材の邪魔をしない少し柔らかめのお米で、粘りは、さらりとした食感のお米を選ぶと相性が良いでしょう。例えば、「あきたこまち」「ササニシキ」「きぬむすめ」がおススメです。
本場インドカレーに使われるお米でバスマティライスなどの長粒種のお米も、食感としては柔らかいものの、粘りはなくさっぱり。ごはんがさらりとした食感になると、まるで野菜の様に感じられますね。
お米マスターが選ぶ、カレーにぴったりのお米
〜 その1 〜
特別栽培米高知県本山町産土佐天空の郷 にこまる(高知県本山町)
トロリとした汁感のあるビーフカレーには、パリッとキレのある粒感と、ルーのうま味を受け止める程よい粘りのお米
四国山系の中央に位置する「高知県本山町」は、急峻な山肌に等高線に沿って湾曲した棚田が無数にひろがる地域。 脈々と受け継がれた農業文化と最新技術の融合で良食味米を生み出します。お米日本一コンテスト in しずおかでは、食味日本一に当たる最高位を2度獲得。お米だけで味わってもとてもおいしいお米。それをカレーと合わせて食べることに罪悪感すら感じつつも、美味しさの相乗効果は必至です。トロリとした汁感のあるビーフカレーには、パリッとキレのある粒感があり、ルーのうま味を受け止める程よい粘りのある「にこまる」が適しています。
四国山系のもたらす激しい寒暖差から生まれる「霜降り米」
「土佐天空の郷」が育つ本山町は、北は石鎚山地、南は剣山地の高い山々に囲まれた盆地です。標高約250m~800mに位置する棚田は、保水性の高いミネラル豊富な土壌と気温の日格差が20℃を超える激しい寒暖差でコメづくりに最良な環境となっています。
また、この寒暖差が、コメの表面にデンプンが網目のように積み重なり霜降りのように見える「デンプンの霜降り米」を生み出します。「霜降り米」は、多くのデンプンを蓄積しているので、炊き上がり後のコメの光沢がキラキラと輝き美しくと甘みも強いのが特徴です。
2度の食味日本一とスマート農業
土佐天空郷を生産するグループ「本山町特産品ブランド化推進協議会」では、品質及び食味の向上に取り組んでいます。お米日本一コンテスト in しずおかでは、食味日本一に当たる最高位を2度獲得。その他のコンテストでも、多くの受賞経験を持ちます。また、早くからスマート農業を取り入れデータに基づくコメ生産で品質や食味を追求しています。
毎年、様々な視点で勉強会を開催し「日本一おいしいコメを作りたい」を合言葉に日々の努力を絶やしません。私たちが熱い思いを込めて生み出すモッチリ濃厚な甘い「土佐天空の郷」を是非ご賞味ください。
本山町特産品ブランド化推進協議会 会長
川村隆重
〜 その2 〜
岩手県産 銀河のしずく(岩手県紫波町)
具材の食感とカレーのスパイスを噛みしめて楽しむキーマカレーには、さらりと軽やかな粘りで、ふんわりとした柔らかめの粒感のお米
キラキラと光る銀河系の星空の下、お米一粒一粒の輝きが美しい「銀河のしずく」は岩手県のオリジナルブランドとして2015年にデビューしました。冷害や病害に強い「奥羽400号」と、優れた食味を持つ「北陸208号」を掛け合わせ、開発に約10年もの歳月を要したお米です。米の特徴として、色つやが良く、白さが際立っています。食べてみると、甘みも粘りも強過ぎず、味のバランスが良いので飽きがこないお米です。ひき肉や玉ねぎなど具材の食感と、スパイスを楽しむキーマカレーには、軽やかな粘りの銀河のしずくが食べやすく、後引く食味です。
おいしいお米作りについて考え直したのは、「銀河のしずく」という品種を試した時から
岩手県央部に位置する紫波町は、お米作りの気候としては寒冷地に属し、早く刈り取りを迎える早生(わせ)品種でないと、お米が熟する時期に日光が足りないという土地柄。そのため、今までは他県品種である「あきたこまち」などを栽培していました。「岩手で米を作るからには、他県品種ではなく岩手オリジナルの品種を、胸を張って作りたい」。その願いを叶える待望の新品種として、2015年に「銀河のしずく」が誕生しました。
不純物のない清廉な水を潤沢に使用し、長年の勘と技術で栽培されています。
紫波町は、岩手県内でも有数の農業地帯に位置しています。紫波町周辺には、2つのダムがトンネルで結ばれている全国的にも珍しい「親子ダム」があります。農業用のロックフィルダムとしては日本一の規模を誇る山王海ダムと、隣接する花巻市石鳥谷町にある葛丸ダムが蓄える豊富な水は、川の水よりも安定した水源であると同時に、不純物のない清廉な水。この水を潤沢に使用することができるのもこの地域の特長です。また、田んぼは黒木の土で、米作りに適した粘土質とは違い、水持ちや肥料もちが良いとは言えないながらも、長年の勘と技術によって、コントロールしやすい一面もあります。
岩手県のオリジナル品種を作れることの誇りを持ち、色気もないが、基本に忠実に栽培しています。白さが際立つ銀河のしずくは、いくらの醬油漬けと合わせると目にも美しく美味しいですよ。
銀河のしずく栽培研究会 会長
細川勝浩
カレーは、家庭の味だと思います。ですから、特別なものではなく、お家にあるお米を、いかにカレーに合うように炊き上げるのかもポイントですね。
炊飯器でカレー用のお米を炊くポイント
カレー用のお米を炊くポイントですが、炊飯器を使用している場合は、早炊きモードを利用してみてください。
早炊きモードは、吸水と蒸らしの工程を短縮し、短い時間で一気に高温で炊き上げます。普通モードと比較して、硬めにさっぱりと炊き上がるのでカレー用のお米を炊く際におススメです。