第7回 炊き込みご飯にぴったりなお米
〜 第7回 〜
炊き込みご飯にぴったりなお米
株式会社山田屋本店 秋沢毬衣
五つ星お米マイスター、米・食味鑑定士。東京都調布市にある株式会社山田屋本店の6代目。全国の田んぼを訪問し、日本の精密かつ受け継がれゆく米作りや生産者の想いを国内外へ発信。お米の専門店「米屋彦太郎」を運営し、お米館調布本店・三越銀座店に出店している。
こんにちは。米屋の娘6代目の秋沢毬衣です。自分好みのお米を見つけるお手伝いをいたします。今回は、「炊き込みご飯にあうお米」です。「炊き込みご飯」は、具材にあわせてお米を変えると、出来栄えがワンランクアップします!ぜひ、お試しくださいね。
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目次
野菜や魚介と相性が良いお米
香りや食感を引き出したい素材、例えば、タケノコ、松茸、トウモロコシ、グリーンピースなどの旬の野菜や、牡蠣や鯛、タコ、アサリなどの魚介には、“粒感が柔らかく・粘りはあっさり”としたお米を選びましょう。
例えば、「あきたこまち」「ササニシキ」「きぬむすめ」「ななつぼし」「たかたのゆめ」などがおススメです。もっちりとした食感のお米に比べて主張は少ないものの、具材の食感を引き立て、口内で嚙むごとに鼻の奥で感じる具材の香りと、舌の奥でお米の甘みが感じられます。ふんわりとした粒感ながらも、口の中でサラリとキレのあるお米を選ぶと、より美味しくなりますよ。
甘辛い味付けの肉や脂がのった食材と相性が良いお米
醬油・砂糖ベースで甘辛く味付けをした肉類や脂がのった魚(サンマ、サケ)など、食材の油脂がもつ多汁性のある具材には、“しっかりとした粒肌・もっちりとした食感” のお米を選びましょう。
例えば、「つや姫」「ゆめぴりか」「にこまる」「いちほまれ」「だて正夢」などがおススメです。しっかりと嚙み応えのあるお米の粒肌を食材の油脂がコーティングし、ひと粒ひと粒を噛みしめるごとに、相乗効果で具材のうま味を引き出してくれます。
お米マスターが選ぶ、炊き込みご飯におススメのお米
〜 その1 〜
岩手県産たかたのゆめ(岩手県陸前高田市)
【野菜類・魚介系】あっさりとした味付けの炊き込みご飯には、具材の香りと食感を引き立てる“粒感が柔らかく・粘りあっさり”したお米
東日本大震災による津波で甚大な被害を受けた陸前高田市の農地。瓦礫の山に姿を変えた農地を前にして、誰もが農業を諦めかけたとき、日本たばこ産業株式会社から陸前高田の農業の復興に役立ててほしいと種もみが寄贈され、陸前高田市の復興プロジェクトが始まりました。おいしいお米を作りたいという生産者の想いと、「たかたのゆめ」の田んぼづくりが街自体の復興のシンボルとなっています。「たかたのゆめ」は、ふんわりと柔らかな食感と、粘りはサラリとしたキレのあるのど越しが特長です。
陸前高田の農業復興へ。みんなのゆめが動き出す
「たかたのゆめ」を栽培する田んぼの多くは、津波被害を受けて土を入れ替えた復旧田です。復旧田は、通常の田に比べて地力が弱いため、「たかたのゆめ」ブランド化研究会が中心となって、毎年、土壌分析や生育調査をしながら、有機質資材を使って土づくりに励んでいます。当初は、なかなか以前の収穫量には及びませんでした。ここ数年でようやく、震災前の平均的な収穫ができるようになりました。
ミネラルを豊富に含んだ海風と太陽に見守られて育ったお米
「たかたのゆめ」の系統は、粘りや食味の良さに定評がある「ひとめぼれ」と「あきたこまち」に由来し、品種改良を経て開発されました。東北の気候に適している品種で、茎が丈夫で倒れにくく病気に強いという特性があり、低農薬での栽培が可能です。
この陸前高田市で、お米を作り続けることで、米を通して「感謝」を伝えたいです。ご飯のおともには、ワカメの茎を醤油と砂糖でじっくり煮た佃煮が最高です!
村上勝義、村上さおり
〜 その2 〜
特別栽培米宮城県産だて正夢(宮城県角田市)
【肉類や脂ののった食材】甘しょっぱい炊き込みご飯には、具材の多汁性をコーティングする“しっかりとした粒肌・もっちりとした食感”のお米
1827年(文政9年)から190年にわたり宮城県角田市で米作りを続ける面川農場の家訓は「田んぼに通っただけおいしくなる」。田んぼの状態を日々観察し、時間と資材を惜しまず、量より質のおいしいお米を作ることを基本とし、代々受け継ぐ米作りの知恵とIT技術を駆使した農業改革によって、未来へ繋ぐ田んぼづくりを行っています。面川農場で作られているお米の中でも最も新しい「だて正夢」は、2018年に宮城県からデビューした新品種です。「だて正夢」は、小粒ながらも、強い粘り、もっちりとした食感で、印象的な味わい。もち米を使わずして、おこわのようなもっちりとした食感の炊き込みご飯を実現してくれます。
宮城県角田の気候に適したオリジナルの有機肥料作り
面川農場がある宮城県角田市は、太平洋側に位置し、夜の気温が高く、昼夜の寒暖差の少ない地域。一見、お米作りには難しい気候ですが、面川さんは美味しいお米作りのために努力を惜しまず、地元の資材メーカーと角田市の気候に合わせた面川家のオリジナルの有機肥料を作り、土づくりを強化し量より質の体制を整えています。日中にでんぷんを蓄え、光合成をしやすい体づくりを行った稲は、粒にしっかりとでんぷんがいきわたり、うま味いっぱいのお米に仕上がります。
農家としてのテーマは「継続」
生産者として“子供や孫へ”未来に繋ぐ栽培方法の確立と人や環境に優しい田んぼづくりを心掛けています。米作りには88回の手間がかかると言われていますが、子供や孫に引き継ぐ農業体系を考え、AI農機具ドローンへの取り組みも検討。近年では、田んぼでドローンを飛ばし、重労働と言われている肥料散布や農薬散布に応用するなど、長年の知恵と経験を引き継ぎながらAI技術を駆使し、後世に残していける農業を目指しています。
「田んぼに通っただけおいしくなる」これは、面川農場に代々受け継がれている言葉です。田んぼの状態を日々観察し、時間と資材を惜しまず、量より質のおいしいお米を作ることがモットーです。
面川農場株式会社
面川大明