第8回 おむすびにぴったりのお米
〜 第8回 〜
おむすびにぴったりのお米
株式会社山田屋本店 秋沢毬衣
五つ星お米マイスター、米・食味鑑定士。東京都調布市にある株式会社山田屋本店の6代目。全国の田んぼを訪問し、日本の精密かつ受け継がれゆく米作りや生産者の想いを国内外へ発信。お米の専門店「米屋彦太郎」を運営し、お米館調布本店・三越銀座店に出店している。
こんにちは。米屋の娘6代目の秋沢毬衣です。自分好みのお米を見つけるお手伝いをいたします。今回は、「おむすびにぴったりのお米」です。「おむすび」は、炊き方・結び方にもコツがありますが、お米選びから注目してあげるとワンランクアップしますよ。
前回まではこちら
目次
おむすびに適したお米=粒厚があり、ほどよい粘りのあるお米
粒厚(つぶあつ)というのは、お米の粒の厚みを言います。ぷっくりとふくらみのある“お腹が出ている”ような粒のお米は、口に含んだ際に、ほぐれ感のあるご飯に仕上がります。また、程よい粘りを感じられるお米を選ぶと、中身の具材との親和性もよく、冷めてからもパサつかないおむすびになります。
例えば、「つや姫」「いちほまれ」「にこまる」「ひとめぼれ」などですね。
おむすび用のご飯は少なめの水加減で炊く
次に、炊き方に注目していきましょう。おむすびの炊き方で通常と異なる点は「水加減」。いつもより、少なめの水加減で炊くのがコツです。炊飯器の場合の水加減は、目盛りの2mm下を目安に炊いてみてください。水を減らして炊く場合は、しっかりと浸漬(夏場30分以上/冬場1時間)することを忘れずに。少なめの水で炊いたご飯は、粒感がしっかりとした印象となりお米の弾力が感じられますよ。
※基本的な炊き方については、第3回「お米をもっとおいしく食べる方法について」を参考にしてみてください。
おいしいおむすびの結び方
ちょっとした心がけでおいしさがワンランクアップします。
① アツアツのご飯で、優しく握る
アツアツご飯でふんわり握ると、米と米の間にふっくらと空気が入り、冷めたときもご飯同士が詰まりすぎず、ふっくら感を保ちながら形をキープすることができます。
② 食べる時間によって、塩加減を変える
すぐ食べるか、後で食べるかによって塩加減を変えてみてください。握ってすぐ食べる場合の塩加減は、少なめ。時間がたってから食べる場合は、多めがおススメです。塩加減の目安としては、すぐ食べる場合は、人差し指と中指の腹に軽く塩をつけた位、お弁当として持ち運ぶ場合は、指3本分の腹に塩をつけてしっかりと手になじませてから握るとちょうど良いですよ。
米屋の娘お気に入りの具3選!
昆布の佃煮+クリームチーズ
昆布の佃煮とクリームチーズを混ぜ合わせるだけ。意外な組み合わせですが、昆布の佃煮の甘じょっぱさとクリームチーズの相性がGOOD!
焼きたらこ+梅干し
焼いたたらこに梅干しをほぐして混ぜるだけ。たらこは焼くことで臭みが消え香ばしくなり、梅干しを混ぜることで、ほどよい酸味が加わり食が進みます。
中村農園の農家のチカラめし「ぜんぶ梅干し握り」
おむすびを握る際の手塩の代わりに、梅干しの果肉をほぐしたものを手にまぶして握ります。長時間の肉体労働には梅干しのクエン酸による疲労回復効果と、殺菌効果でお米が傷みにくいといった、知恵とおいしさの詰まった握り飯。中村さんは、中の具は梅干しと鮭をチョイスするそうです!酸味が食欲をそそりますよ!
お米マスターが選ぶ、炊き込みご飯におススメのお米
〜 その1 〜
鳥取県産 奥大山江府米 星空舞(鳥取県江府町)
粒立ちが良く、弾ける弾力が特長。米粒の見た目の美しさ、きらきらとした輝き、比較的大きな粒で食べごたえのあるお米です。
標高1,200mの奥大山の麓にある江府町。「水の山」と称されるパワースポット・奥大山のブナ林を源流とする清涼な水、大山特有の「黒ぼく」と呼ばれる大山特有の保水力と地力の高い火山灰土。高原地方特有の昼夜の寒暖差が、美味しいお米を育んでいます。「星空舞」は、2018年に鳥取県で誕生した新品種で、澄みきった空気と豊かな自然に育まれ、星のように見た目がきれいなことから名付けられました。
ブナの原生林が生い茂る豊かな水源
大山(だいせん)は、古来から「神の居ます山」として固く守られ、奈良時代以降も山岳信仰の霊場として入山が厳しく制限されていました。その結果、豊かなブナ林が残り、地中深くにたっぷりと純粋な天然水が蓄えられています。また、大山特有の「黒ぼく」と呼ばれる保水力と地力の高い火山灰土と高原地帯特有の昼夜の寒暖差という気候特性もお米作りに適しています。
日本一の星空をもつ鳥取県から生まれた新品種「星空舞」
「星取県」と言われるほどに、美しい夜空が広がる鳥取県。県内各地で「天の川」が見えることから「日本一の星空スポット」としても有名です。星のように見た目が美しい「星空舞」は、炊いたご飯の艶と光沢が優れ、粒がしっかりとした食感で、適度な粘りがあります。噛むごとに口内でひろがる甘さを感じられ、冷めてからも美味しいお米です。
きらきらとした炊きあがり、芳醇な香り、ツルっとした粒感、噛みしめるほどに広がる甘味、のど越しの良さ、丹精こめて育てたお米をお楽しみください!
加藤誉正
〜 その2 〜
北海道産 中村農園 おぼろづき(北海道むかわ町)
炊きたてのもっちり感とジューシーな甘み、冷めてからも唸るうま味の持続力が特長。お弁当やおにぎりに適したお米です。
中村農園のお米は、他の生産者のお米と比較すると少し青みがかった玄米が含まれることが特長です。これは「生き青」と呼ばれ、ほんの気持ち早めに収穫をした玄米にみられます。「生き青」のお米は、白米にすると普通の色味と変わりませんが、炊飯時には豊かな香りが広がり、食べた時の風味がよく、美味しさを引き立たせてくれます。蛇紋岩地帯を活かした大地の恵みと就農勤続50年を迎えてもなお、毎年おいしいお米に挑戦をし続けるひた向きさが、お米の味に反映されています。
穂別川の水系に育まれたお米
むかわ町は、道央圏の南方に位置し、東西及び北部の三方が山に囲まれ、南部が太平洋に面しています。中村農園のある地域には穂別川が流れ、その上流には蛇紋岩帯が広がっています。蛇紋岩にはマグネシウムとカリウムが含まれ、田んぼに豊かな恵みをもたらします。一昔前は、北海道は米作りには向かない地域と言われていましたが、むかわ町は、適度な日照と昼夜の温度差があり比較的米作りに適した地域なので古くから栽培されています。
田んぼに温度計を差し込み、稲の収穫時期を見極める
一般的に稲の穂が5割程度出た後、毎日の平均気温を積み上げて「積算温度」が1000度近くになったときが、収穫に適した時期とされています。中村農園では、積算温度900度に達したころから収穫を始めているため「生き青」が含まれるお米が収穫されます。「生き青」は、熟しきる直前のお米なので一般的な玄米より少し青みがかっていますが、精米すると、お米の香りが広がり、食べた時の風味がよく、美味しさを引き立たせてくれます。
就農し50年になりましたが、まだまだ上の目標を持っています。初心忘るべからず、一年一年挑戦をし続け、本当においしいお米を作っていきます。
代表 中村由美