第10回 殿様に愛された贅沢な味噌をご自宅で。志まや味噌の「御膳味噌」

〜 第10回 〜
殿様に愛された贅沢な味噌をご自宅で。志まや味噌の「御膳味噌」

藤本智子

味噌伝道師MISODO 藤本智子
味噌、和食、健康、地域活性等をテーマに、行政や企業向けの講演会、学校や幼稚園等での食育活動を行う。株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、みそソムリエ、味噌専門メディア「味噌プレス」編集長。

味噌伝道師MISODOによる各地域の味噌と味噌を使ったおすすめ料理の連載です。今回は、徳島県の御膳味噌についてお話させていただきます。
前回まではこちら

今回ご紹介する味噌は「御膳味噌」

御膳味噌とは

阿波の名産品として知られる「御膳味噌」は、江戸時代からの伝統を受け継ぐ、格式高い味噌。大豆よりも麹の割合が多いためやや甘口となりますが、しっかりと熟成させているため、豊かな味わいと香りの良さが特徴です。御膳味噌は、辛口味噌と甘口味噌の両方の特徴を併せ持つ、全国的にも珍しい味わいの味噌です。

殿様に愛された贅沢な味噌

江戸時代、阿波の初代藩主の蜂須賀家政公は、「藍」の栽培を奨励し、一大産業を築き上げました。そして、藍の栽培の間作としてつくられたのが、「阿波目白大豆」です。阿波目白大豆は、良質で粒も大きく、大変風味のよい味噌に仕上がったといいます。また、米麹を贅沢に使用していたため、庶民には手の届かない憧れの味噌。蜂須賀公の御膳に供されたことから、「御膳味噌」の名がついたと伝えられています。

徳島県民の愛する“甘さと濃厚さ”

徳島県民は、甘口好み。しかし、九州の甘口とはまた少し異なり、濃厚さも重要で、まさに御膳味噌の特徴と重なります。地元では、現在でも変わらず御膳味噌が県内消費量の高いシェアを占めています。また、味噌汁以外にも、焼き味噌やおかず味噌として食べる習慣が、根強く残っています。

味噌伝道師MISODO 藤本智子のおすすめ料理味噌伝道師MISODO 藤本智子のおすすめ料理

普段の味噌汁やおじやはもちろんのこと、御膳味噌は、一般的な味噌よりも口当たりがマイルドなので、そのままおかずとして食べるのにも最高の味噌。おすすめの2品を紹介します。

味噌おじや

味噌おじや

味噌おじやは、体調が優れないときや、外食が続いて体をリセットしたいときなどに最適。お好みで、野菜や鶏肉、卵などを入れると、一杯で、心も体も満足できる一品に。地元では、「おみいさん」という、味噌で味付けしたおじやが親しまれています。家庭によって味や具材が異なりますが、里芋や大根、人参が一般的です。入れる食材は、お好みで調整してください。

焼き味噌

焼き味噌

オーブン等でじっくり焼くことで、こんがりとした香ばしさが加わり、一風変わった風味を楽しめます。地元では、白味噌やすりゴマ、ねぎ、すだち、柚子の皮などを混ぜて焼くのが定番ですが、お好みでアレンジを。お酒のお供に、最高の一品になります。地元では、古くから、焼き味噌専用の「味噌焼き皿」が使われているほど、焼き味噌が親しまれています。

今回ご紹介する商品はコレ!

深い旨味とコク、甘味を一度に味わえる「阿波名産 御膳みそ つめあわせ」、濃厚な風味と柑橘類の爽やかさがごはんと相性抜群「阿波の柑橘 おかずみそ3点セット」

半年~1年程度じっくりと熟成させた味噌は、塩かどが取れ、濃厚なコクと甘味を楽しめるのが特徴。具材を選ばずさまざまな料理に使えます。

殿様に愛された贅沢な味噌をご自宅で。志まや味噌の「御膳味噌」

徳島市にある「志まや味噌」は、明治32年に麹屋として創業し、その後、醤油と味噌の製造をスタート。120年以上の歴史をもつ、老舗の味噌メーカーです。南国阿波の温暖な風土と豊かな自然、匠の技が生み出す「御膳味噌」の伝統を受け継いでいます。

殿様に愛された贅沢な味噌をご自宅で。志まや味噌の「御膳味噌」

社訓は、量を追わず、質を追う

「とにかく質のよいものをつくる」という思いを代々受け継いでいる同社。4代目として会社を切り盛りする濱野正裕社長は、28歳の時、当時社長であったお父様が体調を崩してしまったため、急遽、家業を継ぐことに。職人気質で口数の少ないお父様からは、とにかく真剣につくる姿勢を学んだといいます。現在でも、味噌の仕込みの際には、濱野社長自らが率先して作業を行っているそうです。
また、味噌仕込みの要となる麹づくりは、現在でも、手作業にこだわり続けています。御膳味噌は「甘味」も大事にしているからこそ、甘みを引き出す「麹の酵素」の働きをコントロールすることがとても重要です。以前、工場を新築した際、作業性も考慮し、麹づくりの機械化も検討したものの、納得のいく麹をつくるため、あえて経験を活かせる手作業を残したといいます。

社訓は、量を追わず、質を追う

さらに麹が多い、志まやの御膳味噌

一般的な御膳味噌の「麹歩合(大豆に対する麹の割合)」は、11~13割が一般的ですが、志まやの御膳味噌は、さらに米麹を増やし15割前後と高めです。また、仕込みの時期にもよりますが、半年~1年程度じっくりと熟成させているため、塩かどが取れ、濃厚なコクと甘味を楽しめるのが特徴。原料は、濱野社長が厳選した国産のお米と大豆を使用しています。

御膳味噌をもっと多くの人々に

「御膳味噌は、深い旨味とコク、甘味を一度に味わえる味噌で、具材を選ばずさまざまな料理に使えます。今後も地元で愛されている味わいを受け継ぎ、さらに多くの方に召し上がっていただけるよう発信を続けてまいります。最近では、味噌を使ったレシピが多く紹介されるようになりましたが、田楽味噌や酢味噌のように、手軽に気の利いた料理ができる商品を増やしていきたい」と濱野社長は、笑顔で語ります。

御膳味噌をもっと多くの人々に

昨年、濱野社長の娘の比加里さんが、大手百貨店での勤務を経てUターンし、現在、商品開発や店舗での接客を担当。今年春には、前職での経験を活かし、おかず味噌のパッケージをリニューアル。「阿波の柑橘おかずみそ3点セット」は、柑橘類を贅沢に使ったおかず味噌のセット。ほどよい甘さと濃厚な風味に柑橘類の爽やかさが加わり、ごはんや野菜と相性抜群。かわいらしいパッケージで、ちょっとした贈り物にピッタリです。

御膳味噌をもっと多くの人々に

参考:『味噌県外交流表』(全国味噌工業協同組合連合会)、『みそ文化誌』(発行/全国味噌工業協同組合連合会・中央味噌研究所、編集/みそ健康づくり委員会)、『味噌大全』(発行/東京堂出版、監修/渡邊敦光)
取材協力:志まや味噌