第11回 おうちで楽しむ南国宮崎・青島の食文化。長友味噌醤油醸造元「カネナ無添加大麦合せ味噌」
〜 第11回 〜
おうちで楽しむ南国宮崎・青島の食文化。長友味噌醤油醸造元「カネナ無添加大麦合せ味噌」
味噌伝道師MISODO 藤本智子
味噌、和食、健康、地域活性等をテーマに、行政や企業向けの講演会、学校や幼稚園等での食育活動を行う。株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、みそソムリエ、味噌専門メディア「味噌プレス」編集長。
味噌伝道師MISODOによる各地域の味噌と味噌を使ったおすすめ料理の連載です。今回は、九州麦味噌についてお話させていただきます。
前回まではこちら
今回ご紹介する味噌は「九州麦味噌」
目次
九州麦味噌とは
麦味噌は、主に九州地方や中国・四国・関東地方の一部で生産されており、中でも九州産のものを「九州麦味噌」と言います。特に九州麦味噌は、大豆よりも麦の割合が多く、淡色で甘口タイプが主流ですが、近年は、米と麦の合わせ味噌も多くつくられています。麦味噌は、農家の自家用として食されていたことから、別名「田舎味噌」とも呼ばれています。
エリアごとにバリエーション豊かな味わい
一口に「九州麦味噌」と言っても、エリアによって味わいはさまざまで、バラエティに富んでいます。特に南九州は、味噌も醤油もより甘味が強いのが特徴。諸説ありますが、港町の多い南九州では、漁師が塩水で洗った刺身を食べる際、甘みのある醤油を好んだという説。辛い焼酎に合わせるのに、甘いつまみが好まれた説などがあるそうです。
麦麹由来の甘味と香りを味わうべし
九州麦味噌は、米味噌とは全く違った味わいを楽しめる味噌なので、一つ常備しておくと、お料理のバリエーションが広がります。麦味噌自体、全国シェアの約5%と希少なため馴染みのないエリアも多いですが、一度食べると、独特の麦麹の甘味や香りに、やみつきになる人も多いようです。甘口なので、お子さんにもおすすめです。
九州麦味噌は、甘味と香りを最大限に味わいたい味噌。また、アツアツの味噌汁だけでなく、冷やして食べるのも好相性です。おすすめの2品を紹介します。麦味噌又は、米麦合わせ味噌でお楽しみください。
ドレッシング
甘口でマイルドなので、ドレッシングに最適です。味噌にお好みのオイルやお酢などを合わせるだけで、簡単に自家製味噌ドレッシングの完成。お好みでコショウやレモン汁など、好きなフレーバーを加えてください。野菜がぐんぐん進むこと間違いなし!
冷や汁
「冷や汁」は、焼いたアジなどを味噌と合わせて焼いたものをだし汁でのばし、麦飯にかけて食べるもの。レシピは家庭によりさまざまですが、一言で言えば、「冷たい味噌汁ごはん」。昔から全国各地で食べられてきたものですが、中でも宮崎の冷や汁は有名です。本格的に作ろうとするとちょっぴり手がかかるため、シーチキンやサバ缶で代用するのもおすすめです。
今回ご紹介する商品はコレ!
そのまま舐めても美味しい「カネナ無添加大麦合せ味噌」、自宅で簡単味噌づくり「カネナ手作り味噌キット無添加合せ味噌」
一般的な九州麦味噌よりもさらに麹歩合を上げているので、大麦と米に由来する自然な甘みを最大限に引き出しています。
おうちで楽しむ南国宮崎・青島の食文化。長友味噌醤油醸造元「カネナ無添加大麦合せ味噌」
宮崎県の青島は、一年中温暖で南国の情緒漂う場所。長友味噌醤油醸造元(カネナしょうゆ)は、140年以上にわたり南九州の食文化である「甘口醤油」や「麦味噌」をつくり続けています。職人たちの手によって丁寧につくられ、香味、風味、美味の三拍子揃った商品として、地元のみならず海外にもファンが広がっています。
原材料は100%九州産。そのまま舐めても美味!
看板商品である「カネナ無添加大麦合せ味噌」は、一般的な九州麦味噌よりもさらに麹歩合を上げた18割以上。大豆に対する麹の割合を多くすることで、大麦と米に由来する自然な甘みを最大限に引き出しています。原材料は100%九州産で、差し水にはミネラル豊富な宮崎の水を使用。無添加で熱処理もしていない生味噌です。
また、じっくりと天然醸造で発酵・熟成させ、マイルドなテイストに仕上げているため、そのまま舐めても驚くほど美味。麹の粒を残してある「粒タイプ」と、麹の粒をすりつぶしてある「すりタイプ」があるので、お好みで使い分けると◎。
「伝統と経験」から生まれる風味を大切に
原材料はもちろんのこと水や空気、気候など、さまざまな条件が関係する味噌であるため、どの商品も随所に人の手をかけ、丁寧に生産されています。長年の間に培ってきた伝統製法に加え、蔵に棲みついている微生物の働きや、青島の地だから出せる味わいとも言えるでしょう。
生き物であるがゆえ、その時々で多少の違いがあるのは当然のことで、それも魅力の一つ。完成したばかりの味噌からは、ほのかにキャラメルのような芳香がするのだとか。それが、うまく発酵が進んだというサインだそうです。
海外に出たからこそ気が付いた「味噌・醤油」の魅力
四代目の塩見陽子さんは、大学卒業後にスイスの金融関係の企業へ就職し、そこで出会った方と結婚。シンガポールに拠点を移し、充実した日々を送っていたそうです。しかし、15年ほど前に先代であるお父様が倒れたことをきっかけに帰国。シンガポールと青島を行き来する中で、日本固有の文化「味噌・醤油」の魅力に気付き、後を継ぐことを決意したそうです。
「伝統を受け継ぐことを大切にしながらも、これまでの海外経験も生かし、味噌や醤油の可能性を日々模索しています。海を超え、時代を超えて、青島の食文化を国内外に届けていきたいです」と笑顔で語る塩見さん。その言葉通り、同社の商品は、シンガポールや香港などでも、非常に高い評価を得ているそうです。
参考:『みそ文化誌』(発行/全国味噌工業協同組合連合会・中央味噌研究所、編集/みそ健康づくり委員会)、『味噌大全』(発行/東京堂出版、監修/渡邊敦光)
取材協力:長友味噌醤油醸造元