第3回 上質な大豆と米がおいしさの秘密、小玉醸造「秋田味噌」

〜 第3回 〜
上質な大豆と米がおいしさの秘密、小玉醸造「秋田味噌」

藤本智子

味噌伝道師MISODO 藤本智子
味噌、和食、健康、地域活性等をテーマに、行政や企業向けの講演会、学校や幼稚園等での食育活動を行う。株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、みそソムリエ、味噌専門メディア「味噌プレス」編集長。

味噌伝道師MISODOによる各地域の味噌と味噌を使ったおすすめ料理の連載です。今回は、秋田味噌についてお話させていただきます。
前回まではこちら

今回ご紹介する味噌は「秋田味噌」

秋田味噌とは

秋田味噌は、「米の国秋田」にふさわしく、米を多く使った米味噌です。鮮やかな明るい赤褐色で、食欲をそそる光沢とテリがあり、大豆の深い旨味と塩味、お米の甘みが調和した上品な風味が代表的です。東北エリアの味噌としては、比較的「麹歩合(大豆に対する麹の割合)」が高めで、しっかり塩分が効いていながらも、長期熟成させることで十分に塩なれしており、芳醇な味わいです。最近では淡色系の味噌も多く、生産されています。

秋田味噌の歴史

秋田県の大豆は、古くから優良銘柄として知られています。江戸時代には、味噌や醤油などの原料用として中部・関西地方に大量に移出されていました。秋田県内で産業化が本格的に起こったのは明治時代に入ってからで、それまでは家内工業など小規模な事業者や、自家醸造が主流でした。原料供給事情に恵まれたこともあり、明治以降、味噌産業は、堅調に伸びを見せていきました。

上質な原料と技、自然が生み出す芸術品

秋田県は、大豆や米の生産量が多く、品質の高さも全国的に有名ですが、味噌にした場合も、風味よく仕上がると定評があります。味噌は、原料がそのまますべて製品になるため、原料の質は、味噌の味に直結します。伝統的な秋田味噌は、高品質な原料と職人技、秋田の四季が生み出す、芸術品といえるでしょう。

味噌伝道師MISODO 藤本智子のおすすめ料理味噌伝道師MISODO 藤本智子のおすすめ料理

秋田味噌は、普段の味噌汁としてはもちろん、味噌そのものの存在感があるので、そのまま食べるのもおすすめです。手軽にできる、おすすめの2品をご紹介します。

納豆汁

納豆汁

味噌と納豆は、日本を代表するソウルフードですが、味噌と納豆の濃厚な風味は相性抜群です。「納豆汁」は、秋田県や山形県などの郷土料理として知られています。本場では、納豆をすり潰すレシピが多いのですが、手軽に作りたい場合は、ひきわり納豆を使うのがおすすめです。また、キムチや梅干しなどをアクセントに加えてもおいしいです。お好みで好きな具材を加えて楽しんでください。

味噌おにぎり

味噌おにぎり

炊き立てのごはんをぎゅっと握り、味噌をつけた「味噌おにぎり」。肉味噌やねぎ味噌などのおかず味噌を具材としたおにぎりは、コンビニなどでも定番ですが、味噌だけでも十分においしいのです。ごはんのやさしい甘みと、風味豊かな味噌との組み合わせは、それだけでごちそうです。さらに、さっと焼けば、香ばしさもアップ! 味噌感を存分に味わいたい人は、おにぎり全面に豪快に味噌を塗ってお楽しみください。

今回ご紹介する商品はコレ!

高品質な原料と職人技が醸し出す芳醇な味わい、小玉醸造「秋田味噌」

秋田県潟上市にある「小玉醸造」は、秋田味噌を代表するブランドです。
大豆の深い旨味、お米の甘みが調和した上品な風味の「秋田味噌」をお楽しみいただけます。

農林水産大臣賞、秋田県知事賞など数々の賞を受賞

明治12年、創業者・小玉久米之助が味噌・醤油の醸造を手がけたことに始まる小玉醸造株式会社。「ヤマキウ」の名で知られ、秋田を代表する味噌・醤油醸造元として不動の地位を確立、県内の約半分の味噌を生産しています。また、日本酒の「太平山」ブランドも有名です。これまでに農林水産大臣賞、秋田県知事賞など数々の賞を受賞。創業当時の面影を残すレンガ造りの蔵が立ち並ぶ様は、壮観です。

「秋田味噌」の元祖、小玉醸造

小玉醸造は、昭和初期、すでに秋田県内屈指の味噌生産量を有していましたが、「秋田味噌」の名は、販路を県外へ広めるためにと名付けたのがきっかけでした。以降、「秋田味噌」の評判が、全国で高まっていったことから、県産味噌の販路拡大の一助になればと、その名を県内メーカー共有のものにし、「秋田味噌」は、地域の味噌の名称となります。

時代のニーズに合った、バリエーション豊かな秋田味噌

同社では、伝統的な赤色系辛口味噌から、甘口や低塩タイプなど、さまざまな種類の味噌を生産しています。伝統的な秋田味噌は約1年半をかけ、天然醸造で発酵・熟成させているため、芳醇な香りと深い味わいが特徴です。甘口や低塩タイプは、単に塩分を低くするだけでは、味のうすい味噌になってしまうため、上質な麹の量を増やして、十分に旨味を感じられる風味に仕上げています。よい麹は、甘味があるだけでなく、噛んだときに、十分に旨味が感じられるそうです。

1982年に入社、1997年に代表取締役社長に就任し、五代目として会社を切り盛りする小玉真一郎さんは、「時代のニーズに合った新しい要素も柔軟に取り入れ、商品開発を行っています。伝統的な秋田味噌はもちろんですが、いろいろな味噌を、好みや用途によって使い分けてほしい」と、語ります。

参考:『みそ文化誌』(発行/全国味噌工業協同組合連合会・中央味噌研究所、編集/みそ健康づくり委員会)、『味噌大全』(発行/東京堂出版、監修/渡邊敦光)
取材協力:小玉醸造株式会社