第2回 北国が育む味わい。リピート買い続出の平田こうじ店「仙年みそ」

藤本智子

味噌伝道師MISODO 藤本智子
味噌、和食、健康、地域活性等をテーマに、行政や企業向けの講演会、学校や幼稚園等での食育活動を行う。株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、みそソムリエ、味噌専門メディア「味噌プレス」編集長。

前回は、味噌選びに役立つ基本についてお話させていただきました。
今回からは、各地域の味噌とあわせて味噌を使ったおすすめ料理を紹介していきます。

今回ご紹介する味噌は「北海道味噌」

北海道味噌とは

北海道味噌は、麹歩合はやや高めで、マイルドですっきりしたやさしい風味が特徴の米味噌(辛口)です。古くから佐渡や津軽との交流が盛んだったため、佐渡味噌や津軽味噌に近い赤色系の味噌が代表的ですが、淡色系の味噌も多く生産されています。素材の味を生かすシンプルな味わいで、アレンジの幅が広く、一言でたとえるなら「万人向きの味」です。

北海道味噌のはじまり

北海道は味噌の一大産地の一つですが、味噌製造の動きが出てくるのは比較的新しく、幕末になってからのこと。江差(北海道)の豪商・鈴鹿甚右衛門が味噌6万樽を醸造し、蝦夷地ほか京・大阪・江戸などにも移出する計画を立てたようですが、残念ながら実施には至らなかったようです。

本格的に味噌製造が始まったのは、明治時代に入ってからで、それまでは、本州から取り寄せた味噌でまかなわれていました。北海道開拓に活躍した「屯田兵」は、生活に欠かせない米と味噌を「米噌(べいそ)」と呼び、重労働に耐える体づくりに欠かせないものとして、非常に大切に取り扱ったそうです。道内で良質な大豆が生産されるにつれ、味噌製造も次第に広がりを見せていきましたが、開拓に伴い人口も増加、道産だけでは間に合わず、引き続き本州から大量に味噌が移入されていました。

改良に改良を重ねて誕生した“北海道らしい”味わい

北海道と本州という気候の違いから、同じつくり方では良い味噌にならず、改良に改良を重ね、独自の製法を確立していきます。冷涼な地であるため、じっくりと長期熟成させる必要があること。また、水などの自然条件も大きく関わることなどから、次第に北海道らしい風味や色合いを生み出していったのです。

味噌伝道師MISODO 藤本智子のおすすめ料理味噌伝道師MISODO 藤本智子のおすすめ料理

北海道味噌は、素材の味わいを生かすシンプルな味わいでどんな食材とも合わせやすいですが、
中でも魚介との相性は抜群です。おすすめの2品をご紹介します。

海鮮汁

海の幸をたっぷり豪快に入れた海鮮汁は、一品で贅沢なおかずになるほか、特別な日に食べる味噌汁としてもおすすめです。具材に決まりはありませんが、おすすめは、カニやエビを入れた味噌汁です。具材から出る濃厚な旨味が、北海道味噌と相性抜群です。

鮭の味噌漬け

鮭を一晩味噌に漬けるだけで、驚くほどおいしさが増します。ほんのり味噌味がつくだけでなく、生味噌に含まれる「酵素」が、たんぱく質の分解を促進し、身を柔らかくして旨味をアップしてくれます。手軽に高級感のある味わいを楽しめる、失敗なしのレシピです。
※味噌にみりん等を加えてのばし「味噌漬けの素」にするのが、おすすめです。

今回ご紹介する商品はコレ!

北国が育む味わい。リピート買い続出の平田こうじ店「仙年みそ」

北海道上川郡東川町にある「平田こうじ店」は、大正13年創業、90年以上続く老舗の麹屋で、厳選した材料と、昔ながらの製法にこだわり、味噌や麹製品をつくっています。

妥協しない味噌づくり

代表の平田康高さんは、もともと土木関係の会社に勤めていましたが、20年ほど前に、先代のお父様が他界されたのをきっかけに、正式に継ぐことになります。

しかし、いざ味噌をつくろうと思っても、簡単にできるものではありません。味噌仕込みの経験は、20代のときに3年ほど家業を手伝った経験があるのみで、亡父に教えを乞うこともできず、当初は大変な苦労をされたそうです。味噌づくりには寝かせる時間が必要なため、試作をしても結果が出るのは1年後。失敗と成功を繰り返し、ようやく納得できる味にたどり着きます。「妥協したくなかった」と、平田さん。

原料の質と水、職人の勘がすべて

同社の味噌は、道産米、道産大豆を使った贅沢な無添加の味噌です。また、原料と同じくらい大切なのが水で、原料がどんなに良くても水が悪ければ、臭みや濁りが出ることもあるのだとか。東川町は水に恵まれた地で、北海道でも唯一、上水道が無い町です。仕込みには、大雪山の大自然が生み出す、きれいでおいしい地下水を使っています。

大豆は蒸すのではなく、3時間ほどかけて煮ます。そこで出た煮汁は、仕込みの際に加えることで、すっきりしながらも深い旨味が生まれます。そして、味噌づくりの要である麹づくりは、機械に頼ることなく、窓の開け閉めで空気の流れをつくり温度調整をしています。麹づくりは、手間がかかるだけでなく、気候や原料の質が大きく影響するため、マニュアル通りにはいきません。こうして、長年の経験で培った勘と職人技で、丁寧に仕込まれた味噌は、1年以上かけてじっくり発酵・熟成させてつくられます。

食べた人のほとんどがリピート

平田さんが、魂を込めてつくっているブランドが「仙年みそ」で、「こし味噌」「天日塩みそ」「玄米みそ」の3タイプがあります。また、味噌の旨味がぎゅっと詰まった「たまり汁」や、万能調味料「塩こうじ」も人気です。

参考:『みそ文化誌』(発行/全国味噌工業協同組合連合会・中央味噌研究所、編集/みそ健康づくり委員会)、『味噌大全』(発行/東京堂出版、監修/渡邊敦光)