第4回 昔ながらの手づくり麹が、おいしさの秘訣。糀和田屋の「利き味噌セット」

〜 第4回 〜
昔ながらの手づくり麹が、おいしさの秘訣。糀和田屋の「利き味噌セット」

藤本智子

味噌伝道師MISODO 藤本智子
味噌、和食、健康、地域活性等をテーマに、行政や企業向けの講演会、学校や幼稚園等での食育活動を行う。株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、みそソムリエ、味噌専門メディア「味噌プレス」編集長。

味噌伝道師MISODOによる各地域の味噌と味噌を使ったおすすめ料理の連載です。今回は、福島味噌についてお話させていただきます。
前回まではこちら

今回ご紹介する味噌は「福島味噌」

福島味噌とは

米どころである福島県では、古くから良質の米麹を贅沢に使った「米味噌」が多くつくられてきました。中でも「辛口」に分類される「赤味噌」が代表的です。塩分はしっかり効いていながらも十分に塩なれしており、長期熟成ならではの芳醇な味わいが特徴です。
一口に福島味噌といっても、蔵元数が多く、さまざまなテイストの味噌があり、近年は、さっぱりとした風味の淡色味噌や、甘口タイプも多く販売されています。

“醸造王国”福島が誇る味噌

福島県は、豊かな自然や原料事情に恵まれ、古くから味噌や醤油、日本酒などの醸造文化が根付いています。福島味噌は、気候風土に加え、仙台藩、長岡藩それぞれの味を受け継いだともいわれています。

エリアによっても異なる多彩なバリエーション

蔵元の特徴ほか「浜通り」「中通り」「会津地方」といったエリアの違いによっても味わいが異なります。「会津地方」では、盆地の厳しい気候条件の中で育まれた長期熟成型の深みのある味わいが一般的です。一方で「浜通り」は海に面しているため、魚介類と相性がよくなるよう比較的あっさりとした風味の味噌が多く、「中通り」はその中間といった感じです。

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福島味噌は、さまざまな食材と相性がよく、汎用性の高い味噌です。手軽にできて絶品の「田楽」と「貝汁」をご紹介します。

田楽

田楽

豆腐やこんにゃく、なすなどに、甘く仕立てた味噌をつけていただく「田楽」は、手軽さとおいしさから、江戸時代にファストフードとして人気を得ました。見た目にも美しい田楽は、普段のおかずはもちろん、パーティーのときも大活躍。田楽ソースは、味噌、砂糖、みりん、酒などで簡単につくることができる上、常備しておくとさまざまな食材に使えて便利です。

貝汁

貝汁

魚介類の中でも手軽に使えるアサリは、特におすすめです。芳醇な味わいの福島味噌と、アサリ独特の旨味と甘味が溶け込んだ汁は、この上ないおいしさです。アサリは、お味噌汁の具材としては定番ですが、トマトやクリームベースなど、洋風にアレンジしてもおいしいので、いろいろなバリエーションで楽しんでください。

今回ご紹介する商品はコレ!

昔ながらの「手づくり麹」がおいしさの秘訣、糀和田屋「利き味噌セット」

福島県の中央部、本宮市にある糀和田屋は、約250年の伝統を受け継ぐ老舗の蔵元で、手づくり麹をベースに、味噌や甘酒、醤油など多彩な商品を展開しています。

江戸時代「蔵屋」から始まった

糀和田屋の祖先は、京都から福島に渡り、地元農家の穀物を貯蔵する蔵を所有し、生計を立てていました。当時は「蔵屋」と呼ばれ、重宝されていたといいます。江戸時代後期に差しかかる頃、築き上げてきた生産者との深いつながりを元手に地元で縁の深かった土地の名「和田」を屋号にし、地元の農産物を発酵食品へ加工する「糀和田屋」を創業しました。

「福島県ブランド認証産品」に選定

糀和田屋の味噌は、上質な国産原料を使用した昔ながらの味わいが定番です。塩分はしっかり効いていながらも、麹のやさしい甘味と大豆の旨味が調和した奥深い味わいが特徴です。天然醸造のため、仕込む時期により異なりますが、半年~1年程度かけて、木桶で発酵・熟成させています。
近年は、甘口が好まれる傾向があるため、伝統的な味噌に加え、麹の量を増やして甘口に仕上げた味噌も取り揃えています。糀和田屋の味噌は、福島県を代表する逸品として「福島県ブランド認証産品」にも選定されています。

伝統製法でつくる「手づくり麹」にしか出せない味わい

厳選した原料にこだわることに加え、なんといっても、伝統的な製法でつくる「手づくり麹」がおいしさの秘訣です。味噌と甘酒に使う麹は、機械に頼らず、職人技を駆使し、手作業でつくられています。手づくり麹は手間がかかる上、その時々の気候や原料の状態などでバラツキが出てしまうなど難しさもありますが、機械には出せない芳醇な味わいに仕上がるそうです。
十代目として会社を切り盛りする代表取締役の三瓶正人さんは、「時代の変化に伴い、求められる商品も変わっていきますが、これからも基本に忠実に、手づくり麹ならではの味わいを大切にしていきたいです」と語ります。
※写真手前左:代表取締役 三瓶正人さん

参考:『みそ文化誌』(発行/全国味噌工業協同組合連合会・中央味噌研究所、編集/みそ健康づくり委員会
取材協力:糀和田屋