第5回 バリエーション豊かな信州味噌を味わいつくす、丸高蔵「すわころん 信濃路セット」「すわころん 慈養セット」
〜 第5回 〜
バリエーション豊かな信州味噌を味わいつくす、
丸高蔵「すわころん 信濃路セット」「すわころん 慈養セット」
味噌伝道師MISODO 藤本智子
味噌、和食、健康、地域活性等をテーマに、行政や企業向けの講演会、学校や幼稚園等での食育活動を行う。株式会社ミソド代表取締役、一般社団法人みそまる普及委員会理事、みそソムリエ、味噌専門メディア「味噌プレス」編集長。
味噌伝道師MISODOによる各地域の味噌と味噌を使ったおすすめ料理の連載です。今回は、信州味噌についてお話させていただきます。
前回まではこちら
今回ご紹介する味噌は「信州味噌」
目次
信州味噌とは
信州味噌は、美しい光沢と鮮やかな山吹色、すっきりとした旨味と豊かな芳香が特徴の米味噌です。今や全国各地で愛されており、全国シェアの約50%を占めています。一口に信州味噌といっても、長野県には味噌蔵が100社以上あり、蔵元によってさまざまな色や味わいの味噌が生産されています。
信州味噌の歴史
信州味噌は、鎌倉時代の僧・心地覚心が、味噌づくりを広めたことに始まるという説が有力です。そして、時は流れて戦国時代、甲斐国の武田信玄が、大豆の増産と味噌づくりを奨励し、信州味噌の基盤をつくりました。
信州味噌が全国に広まる契機となったのが関東大震災で、関東エリアの味噌製造業者も壊滅的な被害を受けたため、救援物資として信州味噌が大量に被災地へ送り込まれました。淡白で上品な味わいの信州味噌は、関東の人々に大好評。以来、信州味噌は関東地方に定着し、その後、全国に市場を拡大しました。
味噌王国「信州」が生み出す逸品
信州エリアは、澄んだ空気ときれいな水に恵まれた、自然豊かな場所です。また、昼夜通し寒暖の差が激しい気候であることも、味噌づくりに最適とされる所以で、それぞれの温度帯でさまざまな菌の働きが活性化することで、豊かな味わいを醸し出します。信州味噌は、素材の味を生かすシンプルな味わいですが、味噌そのものの存在感も抜群。とにかく万能で、合わない食材は皆無といっても過言ではありません。
信州味噌は、食材の風味をうまくまとめてくれるため、肉や野菜などたくさんの食材を使う「豚汁」は最高に合います。また、手軽にあら汁風の味わいが楽しめる「サバ缶」を使った味噌汁もおすすめなので、ご紹介します。
豚汁
豚肉やごぼう、にんじん、じゃがいもなど、たくさんの具材の旨味がスープに溶け込み、味噌が香りを添える「豚汁」は、老若男女に愛される不動の人気メニュー。主菜にもなる、栄養満点で便利な一品です。豆乳ベースや、カレーやエスニック風味などにアレンジすると、一風変わった豚汁が楽しめます。
サバ缶の味噌汁
サバ缶を常備しておけば、冷蔵庫に何もない!というときも、手軽にごちそう汁を作ることができます。サバの濃厚な旨味は、シンプルな信州味噌との相性が抜群です。お好みで、ねぎや生姜などを加え、召し上がってください。なお、長野県では、ネマガリタケ(ヒメタケ)とサバ缶を合わせた「タケノコ汁」が郷土料理として根付いています。
今回ご紹介する商品はコレ!
バリエーション豊かな信州味噌を味わいつくす、丸高蔵「すわころん 信濃路セット」
「すわころん 慈養セット」
長野県諏訪市にある「丸高蔵」は、「み子ちゃん」で知られる「神州一味噌」発祥の蔵です。
王道の信州味噌をはじめ、独自性の高いオリジナル味噌を多数販売しています。
350年以上の歴史を受け継ぐ、清酒「真澄」がルーツ
丸高蔵は、1662年(寛文2年)創業の清酒「真澄」を醸造していた、十九代宮坂伊兵衞さんの「健康に良い味噌を醸造するように」との命により、1916年(大正5年)に味噌の醸造を始めました。大正時代に移築された蔵は、国の登録有形文化財にも登録されており、歴史の風格を感じます。
原料の選定と“4日麹”がおいしさの秘訣
味噌の味に直結する原料の選定には余念がなく、代表的な味噌「十四割」「信濃路」ほか「みそ玉づくり」「慈養みそ」には、契約栽培している長野県産の大豆と米を使用しています。また、味噌づくりの要となる麹は、2~3日で完成させるのが一般的ですが、上記4品は、4日間かけてつくります。
ただ時間をかければよいわけではなく、仕上げる味噌の風味に合わせ、温度や時間などを調整しながら最適の状態にします。こうして手間暇かけてつくられた麹を使い、じっくりと時間をかけて発酵・熟成させることで、滋味深い味わいに仕上がるそうです。また、発酵・熟成の温度管理には、信州上諏訪温泉の熱を利用するなど、資源を有効活用しています。
“諏訪人気質”ならではの丁寧な味噌仕込み
諏訪の人々は、古くから周りの人との共存、血縁の結びつきを大切にしてきました。また、自ら困難に立ち向かう気質も持っているといわれています。わざわざ4日かけて丁寧に麹をつくるのも、そんな諏訪人気質ならではといえるでしょう。
工場長の金森明さんは、「味噌づくりは、そのときの原料の状態や気候によって、毎回全く同じとはいきません。迷うことがあれば職人同士で話し合い、時間や温度などを調整しながら、一定の品質に仕上がるようにしています。一筋縄ではいきませんが、そこも生き物であるがゆえの奥深さであると思います」と語ります。たとえ、条件が変わったとしても、一定の品質に仕上げるのは職人技。基本の伝統技術は受け継ぎつつも、長年にわたり技を磨き続けてきた、まさに、英知と努力が集結した信州味噌です。
参考:『みそ文化誌』(発行/全国味噌工業協同組合連合会・中央味噌研究所、編集/みそ健康づくり委員会)、『味噌大全』(発行/東京堂出版、監修/渡邊敦光)
取材協力:丸高蔵