第12回[応用編]個性的な醤油のあれこれ
〜 第12回 〜
[応用編]個性的な醤油のあれこれ
職人醤油 代表 高橋万太郎
全国400以上の醤油蔵を訪問し、セレクトした醤油を販売する「職人醤油」代表。前橋本店のほか東京の松屋銀座店にも出店している。
これまで11回に渡りお送りしてきたこの連載も今回が最終回となります。身近にあって当たり前の存在の醤油に少しでも関心を持っていただけたなら幸いです。前回まではこちら
さて、これまで醤油の種類の解説や、製造現場や生産者の話などをしてきましたが、最後は少し変わった醤油の話です。少し前に卵かけご飯の専用醤油がブームになり、多くの醤油メーカーが手掛けるようになりました。高速道路のサービスエリアなどに行くとご当地の醤油加工品がたくさん並んでいると思いますが、最近はさらに個性的な醤油が誕生してきています。
香りに注目!醤油を直接スモークした燻製醤油
醤油の大きな特徴の一つに「香り」があります。普段、あまり意識をされることの少ない要素だと思いますが、香りこそが醤油の特徴だと主張する生産者もいるくらいに重要な要素です。その香りに着目したのが燻製醤油です。つくっているのは兵庫県の末廣醤油。1年熟成した濃口醤油を8~9時間かけてスモーク。醤油を液体のまま燻製にしているのです。しっかり香りがついているので、一滴垂らすだけでもその芳しい香りが料理に広がります。元々ローストビーフのお店から依頼された醤油とのことで、ステーキやベーコンなどの肉にもよく合います。例えば、カリカリに焼いたベーコンを水菜にのせて燻製醤油をかけるだけで、ベーコンのコクとうま味に燻製醤油の香りが加わってさらにおいしくなりますよ。
醤油マスターのおすすめレシピ「水菜サラダ」
燻製の香り立つシャキシャキ食感のサラダです。おつまみとしてもおすすめです。
材料
水菜 2株、ベーコン 4枚、薫紫 適量、ナッツ 適量
作り方
1. ベーコンを食べやすい大きさに切り炒める。
2. 水菜を5cm程度に切り、上に炒めたベーコンをのせる。
3. ナッツをトッピングし醤油をかけたら完成です。
おすすめの醤油
薫紫
(末廣醤油)
見た目は完全に水!醤油の色がまったくつかない透明醤油
色も醤油の特徴の一つです。一般的に熟成期間が長くなると色は濃くなる傾向にあります。ただ、うま味は強くなる半面、調理をした時に色が付いてしまいます、そこで、色がつきにくい淡口醤油や白醤油が誕生してきた経緯があるのですが、その色がまったくついていない醤油が登場しています。見た目は水のような透明醤油。開発途中は社内でもこれは醤油といえないのではと議論があったそうですが、発売をすると大人気商品に。子供が服にこぼしても大丈夫という機能的な面もありながら、調理に使っても色がつかないので、特に海外のフレンチなどのシェフから人気が高いとか。ベースとなるのは一般的な濃口醤油で、そこから特殊製法で色を抜いています。すこし甘みがついている印象ですが、醤油の色が全く付かないので素材の色が活かせる、ちょっと不思議な醤油です。
醤油マスターのおすすめレシピ「まぐろの透明醤油漬け」
まったく醤油の色がつかないので、きれいな赤色が際立ちます。
材料 2人分
まぐろ(ブロック) 200g、透明醤油 大さじ3、みりん 大さじ1、酒 大さじ1
作り方
1. まぐろを一口大のサイコロ状に切る。
2. みりんと酒を混ぜて加熱し、アルコールを飛ばす。
3. 粗熱をとり、透明醤油を加える。
4. まぐろを漬けて冷蔵庫で20~30分おけば完成です。
おすすめの醤油
透明醤油
(フンドーダイ)
大豆が主原料の溜醤油はグルテンフリーの醤油
3つめはグルテンフリーの醤油です。正統派の溜醤油なのですが、最近、お問い合わせが増えている実感があります。特に海外からのグルテンフリー醤油のニーズの高まりはあるのですが、対応できる醤油メーカーが限られているのが実情です。グルテンフリーとは、小麦などに由来されるグルテンを含まないものを指します。醤油の基本原料は大豆、小麦、食塩なので、一般的な醤油には小麦が含まれています。中部地方を中心とする地域では大豆と食塩のみの溜醤油を昔からつくられていて、これがグルテンフリー醤油として注目されています。現場の職人たちは「グルテンフリー醤油を意図してつくっているというより、昔からこの製法が当たり前なんだよね」と言いますが、仕込みから完成まで3年程かける長期熟成のためすぐに量産できない醤油だったりもします。
醤油マスターのおすすめレシピ「豆腐」
濃厚な醤油のうま味が豆腐にアクセントを加えます
材料
豆腐 1個、醤油 適量、わさびやネギなどの薬味 お好みで
作り方
1. 豆腐を適切な大きさに切る。
2. お好みで薬味を添えて醤油をかけたら完成です。
おすすめの醤油
宝山 丸大豆たまり
(中定商店)