第4回[業界事情]若い世代と醤油づくりの変化

〜 第4回 〜
[業界事情]若い世代と醤油づくりの変化

職人醤油 高橋万太郎

職人醤油 代表 高橋万太郎
全国400以上の醤油蔵を訪問し、セレクトした醤油を販売する「職人醤油」代表。前橋本店のほか東京の松屋銀座店にも出店している。

今回は、若い世代と醤油づくりの変化についてお話させていただきます。
前回まではこちら

若手の活躍が次世代に食を繋げていく

醤油は液体なので運ぶのが一苦労なんですよね。車のない時代、人が背負って山を越えるのは現実的ではないわけです。地域の中に酒蔵や味噌屋、醤油屋がありました。その後、車が登場して遠くまで運べるようになりますが、その土地でつくって、その土地に住む人たちに販売することが多かったと思います。すると近隣の醤油メーカー同士はライバルです。自分たちの売り上げを上げるにはライバルと闘わなくてはいけないわけで、「昔はバチバチに争っていたよ!」という話はよく耳にします。

ただ、今の時代になると必ずしも地元だけに販売する必要がないため、様々な醤油や販路が生まれています。そして、そこに登場するのは若い世代がきっかけになっていることが多いです。今回はそんな若手にまつわる話をご紹介したいと思います。

手造り醤油を目指す鈴木醤油
福島県天栄村

福島県に鈴木醤油店という小さな醤油蔵があります。2014年に家業に戻ってきた鈴木良浩さんが目指すのは「手造りの醤油」。実は醤油業界で「手造り」を名乗るのはかなりハードルが高いんです。麹造りを「麹蓋」という博物館に展示されているような昔ながらの道具を使うことなど、いくつかの基準が決まっていて、全国でも堂々と「手造り」を名乗れるのは数えるほどしかないと思います。しかも、大豆を蒸す道具も木桶を改造した鈴木さんのお手製。下から蒸気を入れてゆっくりと蒸す方式です。「こうすると大豆が甘くなる気がするんです。夕方から蒸して、一晩おいて翌朝に室に入れます」と、鈴木さん。ただ、大手の醤油メーカーの担当者に聞けば、大豆は短時間で蒸すに限ると言うはずです。大型の圧力釜で蒸して、その後は急いで冷却するのが業界のセオリー。そんな真逆の理論で鈴木さんがつくる醤油は地元のラーメン店や飲食店など、「鈴木醤油の醤油がいい!」とファンを増やし続けています。

常に進化する醤油を目指すミツル醤油醸造元
福岡県糸島市

福岡県糸島市にあるミツル醤油醸造元の城慶典さんは、「醤油仕込みを復活させる」という取り組みの先駆け的な存在です。それまでのミツル醤油では生揚醤油にアミノ酸液や甘味料を加えた甘味のある醤油が主力でした。ただ、自分が選んだ大豆や小麦から醤油づくりがしたいと、東京農業大学の在学中から各地の蔵元を回って勉強を重ねてきたそうです。麹づくりの温度管理や時間、使用する道具、諸味を撹拌する頻度や桶の管理の仕方など、それぞれの良い部分を取り入れて独自の工夫を施しています。

「今年はこの大豆で仕込もうと思います」とホームページで報告をする城さん。時には、「思い通りに発酵しません!」と赤裸々に語ります。一般的な醤油メーカーは醤油の品質を一定にすることに注意を払います。それは、飲食店などに納品した時に、醤油の味わいにブレがあるとクレームの元になるからです。いつも同じ味の醤油をつくるために、仕込み方法や使用する種麹などを変えることに高いハードルを感じるのが当たり前。ただ、城さんにはそれがありません。よりよい醤油を追求して、どんどん変化を加えていきます。そんな進化する醤油はまた熱心なファンに囲まれています。

足立醸造が新工場を建てることを決められた理由
兵庫県多可町

私が親子2代に渡ってお付き合いしているのが兵庫県の足立醸造です。初めて足立達明社長と出会ったのは息子さんたちが入社する前だったのですが、その足立さんが新工場を建てたのは平成24年のことでした。その時、業界内は少し騒然としていた気がします。各地の醤油蔵を巡っていると、どの蔵元も何十年、何百年という歴史を刻んでいます。蔵も設備も老朽化、増設の繰り返しで作業導線の悪い製造現場。いっそのこと、新工場を建てて全部を一から作り変えられたらと多くの醤油蔵が思っているはずですが、新工場のニュースを耳にする機会はほとんどありませんでした。すごいねという賛辞とともに本当に大丈夫なの?という心配の声が足立さんに集まっていたことと思います。当の本人は「まぁ、でも借金返すのは息子たちだし」と笑っていました。

その時に足立さんがしたもう一つの決断はプラスチックタンクを捨てることでした。全量を木桶仕込みでしていくのだという強烈な意思表示です。先日、足立裕さん、学さん兄弟が海外のバイヤーと商談をしている場に同席していました。「ぼくたち兄弟なんです」という英語の投げかけに、先方のバイヤーが「それは素晴らしい」と先方が大きなリアクションをしていました。こんな光景を想像できたからこそ、足立さんは新工場建設と全量木桶仕込みに舵を切る決心ができたのだと思います。

若手=その土地の未来の担い手。業界を盛り上げるためには若い世代が活躍することが必要だと思いますし、彼らの活躍が次世代へ食を伝えることへなるのだと感じます。

今回ご紹介する商品はコレ!

若い世代の醤油蔵がつくる醤油3本セット
¥1,512(税込)

それぞれ異なる蔵元が手掛ける醤油で、醤油の地域による個性を感じていただける醤油をセレクトしました。

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平右衛門

平右衛門(鈴木醤油店

おすすめの使い方:あつあつのごはんにそのままかけて

正真正銘の手造りと呼べる醤油/麹蓋による麹づくりと櫂棒による攪拌作業。福島県にある天栄村の若夫婦が手掛ける木桶による天然醸造醤油は、香りよく優しい味わい。まずは直接ご飯にかけて味わうことをおすすめします。
生成り、うすくち

生成り、うすくち(ミツル醤油

おすすめの使い方:アスパラガスのごま和え、しょうがと油揚げの炊き込みご飯

かけにも調理にも使える存在感/一夏を越したフレッシュな諸味に自家製の甘酒をブレンドして調熟後に圧搾。大豆、小麦、米は福岡県糸島市産で、塩は沖縄のシママース。開栓したらお湯で割って飲んでみて。
木桶仕込み小さな国産有機醤油

木桶仕込み小さな国産有機醤油(足立醸造

おすすめの使い方:油揚げを焼いてかける、かぼちゃの煮物

桶仕込の国産有機JAS認証醤油/高さ4メートルの巨大な木桶仕込み。全量を木桶仕込みにこだわる蔵元は海外にも目を向けて果敢にチャレンジしています。国産の有機大豆・有機小麦を使用で万能的に使えます。