第10回 日本独自の伝統的な塩「藻塩」とは
〜 第10回 〜
日本独自の伝統的な塩「藻塩」とは
ソルトコーディネーター 青山志穂
一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事。塩の知識啓蒙のため、塩のプロであるソルトコーディネーターの育成のほか、国内外を飛び回りながら塩の基礎知識や使い方に関する講座を実施。メディア出演、執筆売場のコーディネート、商品開発、シェフとのコラボなど活動は多岐にわたる。
みなさん、こんにちは。塩の正しい知識や使い方、塩全般の魅力をお伝えする活動をしている、ソルトコーディネーターの青山志穂と申します。連載を通して、みなさんの生活がぐっと豊かにおいしく、そして健康的になる塩の使い方をお伝えしていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。10回目となる今回は、日本の伝統的な製塩方法である藻塩についてご紹介します。
前回まではこちら
日本独自で発展した「藻塩づくり」
「塩」は、人間の生命維持に欠かせないミネラルなので、世界各地で製塩が行われていますが、海藻を製塩に利用した「藻塩」は日本でしか生産されていません。近年、アサクサノリに関する研究結果から、日本人の腸には海藻に含まれる食物繊維を分解できる特殊な腸内細菌がいることが明らかになりました。この腸内細菌を持つのは世界広しといえども、おそらく日本人だけであろうと推測されており、「藻塩」は海藻を食べてきた日本人ならではの製塩方法なのです。藻塩の歴史は日本の塩づくりの起源、縄文時代にまでさかのぼります。日本で最初に行われた藻塩のつくり方には諸説ありますが、海藻のエキスを入れることが目的だったわけではなく、海藻を利用することで海藻に付着した塩分を海水中に溶かし、より濃い塩水を得るために使われていたと考えられています。藻塩づくりに最初に活用されたのは玉藻(ホンダワラ)と言われており、海辺の遺跡から藻塩焼きに使われた土器が出土したりしています。
藻塩のつくり方いろいろ
海藻をすのこの上に積んで、海水を注ぎかけて塩分を多く含ませたら、焼いて灰にします。灰を水に溶かし、上澄み部分の濃い塩水を釜で煮詰めて塩を結晶化させます。
海藻を収穫し乾燥させ、塩が吹いた状態にします。乾燥した海藻をすのこの上に積んで、煮詰めている途中の温かい海水をかけ流して濃い塩水にしたら、さらに釜で炊いて結晶化させます。
海藻ごとに異なるうまみと風味
現在では、日本全国各地で海藻を使ったご当地藻塩がつくられるようになり、ホンダワラ以外にもコンブ、アラメ、ヒジキ、クロメ、モズクなど、実に多種多様。ちょっとしたブームになっています。藻塩の特徴といえば、海藻のエキスが入っていることで塩だけだと味わえないうまみや風味を含んでいるものが多いこと。もちろん主たる原料となる海水による違いもあり、煮詰めるのかエキスを後混ぜするのかなどでも違いがありますが、総じて海藻による味わいや色、香りの違いを楽しむことができます。
いつもの料理に藻塩をプラスするとおいしくなる
藻塩には海水だけからできた塩にはない風味とうまみや甘味を含んだものが多いので、いつもの料理に使う塩を藻塩に変えるとぱっと料理がおいしくなりやすいという特徴があり、1つ持っているととても便利です。磯の風味が強く残っている藻塩は魚介類との相性が良く、うまみが強い藻塩はスープや煮物の出汁の代わりにもなり、牛肉などに使えば昆布締めのようなニュアンスを演出することができます。ごはんに合わせると海苔を使わず海藻の風味がある塩むすびに仕上がるなど、活用範囲が広いです。
今回ご紹介する商品はコレ!
ご当地の藻塩を楽しめる「にほんのでんとう」
¥1,620(税込)
塩の達人・青山さんが全国各地の塩の生産地を訪問してセレクトした、バラエティ豊かな藻塩が詰まったセットです。1つの1つの塩の説明やおすすめの使い方が記載されたパンフレットも入っているので使いやすさ抜群です!
詳しく見る姫ひじきの塩(株式会社海駅/広島県)
さらりとしたあまみが特徴
相性の良い料理:白身魚の刺身、魚の塩焼き
地元で獲れる姫ヒジキを使用した藻塩。カルシウムが特出して多く、さらりとした甘味をベースに、途中でうまみや酸味が感じられます。粒は細かいですがざらりとした口当たりがあり、味が長く続きます。少し歯ごたえがあるように厚切りにした刺身や魚の塩焼きにおすすめです。
藻昆布塩(株式会社えん/新潟県)
昆布のうまみが凝縮
相性の良い料理:牛肉、卵、吸い物
その美しさから名勝天然記念物として指定されている笹川流れで育ったホンダワラを使用した藻塩です。できあがった塩に海藻エキス入の濃縮海水をブレンドし乾燥させたのち、さらに昆布粉末をブレンドした二段仕込みを行っています。しっかりしたうまみがあり、味の濃い食材におすすめです。
ロザリオ塩藻塩(天然ロザリオ塩製造直売所 /熊本県)
複雑な大人のうまみ
相性の良い料理:赤身魚の刺身、赤身肉、揚げ物
地元で獲れるカジメとヒジキを使用した藻塩です。2種類をミックスするのは珍しく、ざらりとした食感のある粒が溶けるほどに複雑なうまみが舌の上に広がります。余韻に心地良い酸味と苦味を感じるため、味の濃い食材のほか、揚げ物のつけ塩としてもおすすめです。
塩竈の藻塩(合同会社顔晴れ塩竈/宮城県)
上品なうまみが長く続く
相性の良い料理:白身魚、おにぎり
昔から伝わる伝統製法に則りホンダワラを使用した藻塩です。温めた海水をかけたり一緒に煮込んだりせず、常温の海水をかけ流す製法なので、ヨウ素が入り込まず純白に仕上がります。上品なうまみが舌の上で長く続き、後味はクリア。淡泊な食材におすすめです。
しっかり塩を勉強したい方は、こちらの本もおすすめです。
日本をはじめ世界各国の245種類の塩について、詳しい説明やおすすめの使い方が記載されている他、塩の豆知識や基礎知識を学ぶことができます。
日本と世界の塩の図鑑
¥1,650(税込)