第9回 究極の塩むすびを堪能しよう 米と塩

〜 第9回 〜
究極の塩むすびを堪能しよう 米と塩

ソルトコーディネーター 青山志穂

ソルトコーディネーター 青山志穂
一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事。塩の知識啓蒙のため、塩のプロであるソルトコーディネーターの育成のほか、国内外を飛び回りながら塩の基礎知識や使い方に関する講座を実施。メディア出演、執筆売場のコーディネート、商品開発、シェフとのコラボなど活動は多岐にわたる。

みなさん、こんにちは。塩の正しい知識や使い方、塩全般の魅力をお伝えする活動をしている、ソルトコーディネーターの青山志穂と申します。連載を通して、みなさんの生活がぐっと豊かにおいしく、そして健康的になる塩の使い方をお伝えしていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。今回は、お米のおいしさを最大限に引き立ててくれる塩選びについてご紹介します。
前回まではこちら

お米のおいしさを堪能するなら「塩むすび」

お米のおいしさを堪能するなら「塩むすび」

日本に生まれ育った人のほとんどが、毎日のようにお米を食べているのではないでしょうか。「気がついたらいつもそばにあった」「ほぼ毎日食べている」という意味では、お米も塩も同じかもしれません。日本は縦に長く地域によって気候が大きく異なるため、各地域で育ちやすいように品種改良を重ね、さらに多様化する嗜好に応えるようにして、多種多様なお米が開発されてきました。一言で「お米」と言っても、食感が“硬い” “柔らかい” “もっちり” “あっさり”を軸に大きく4つに分類され、それぞれの組み合わせで多種多様な食味があります。
※「お米の品種による「食感」の違い」は、お米マスター秋沢さんのコラムで解説しています。お米選びの参考にしてみてください。

お米のおいしさを余すところなく、そしてどこでも手軽に楽しめる代表的なメニューというと、もちろん「塩むすび」。わたしたちのDNAに刻み込まれているかのように、塩むすびを食べるとノスタルジックな、ちょっとほっとするような気分になりますよね。運動会や遠足やいつものお弁当に入っていたなあ、部活動の試合の時に食べたなあ・・・それぞれ思い出があるのではないでしょうか。そして今でもふとした時に食べたくなる、いつでも戻れる場所。それが塩むすびという存在なのではないかと思います。最近では衛生面の問題もあり、直に手で握ることは少なくなりましたが、誰かが自分のために握ってくれた塩むすびは、なんだかとても特別な味わいとして記憶に刻まれている人も多いのではないかと思います。

お米と相性のよい塩の選び方

お米と相性のよい塩の選び方

おむすびに塩を加えると保存性が高まるほか、お米の甘味が引き立つので、冷めてもおいしく食べられるようになります。どの塩を使っても同じかというと、もちろんそんなことはありません。お米が温かいうちに食べるのか、冷めてから食べるのか、同じお米でも使う塩によってお米の味わいが変化するので、おいしい塩むすびを作るには、塩選びがとても重要になります。塩のしょっぱさは、主に塩に含まれる「食塩相当量」の多少に起因します。パッケージの裏面を見て、食塩相当量が低い=しょっぱさがまろやかで甘味を感じる塩を選んであげると、お米と相性のよい塩を引き当てやすくなりますよ。

“究極の塩むすび”を作るなら、お米と同じ甘みや旨味を持つ塩がおすすめ

今回は「冷めた状態で食べる塩むすび」の塩選びのコツをご紹介します。お米の中の「もっとも特徴的な味わい」と「食感」の2点に注目すると、おすすめの塩の種類が絞られてきます。
お米の「もっとも特徴的な味わい」とは、「そのお米はどんな味がするのか」ということ。例えば一言で「このお米は甘い」と表現しても「甘さ」にもいろいろな種類がありますよね。さらっとして余韻の短いすっきり系の甘さ、ドシンと重く余韻が長いずっしり系の甘さ、乳製品の甘さのようなミルキーな甘さなどなど。最近ではアミノ酸のうまみを強く感じるような品種もあったりします。

次にお米の食感。これは炊き方によってある程度コントロールできてしまいますが、それでも品種の持つ元々の食感が強く影響します。食感が硬めで咀嚼回数が多いお米なのか、柔らかめで口溶けが良いお米なのか。これも塩を選ぶ上での重要なポイントになります。硬めのお米には塩の粒が比較的大きく、咀嚼するごとに味が広がる塩がおすすめ。最後までしっかりお米の味わいにアテンドしてくれて、名脇役として主役のお米を引き立ててくれます。逆に食感が柔らかいお米に粒が大きい塩を選んでしまうと、塩の味が最後まで残ってしまうので、「しょっぱいなあ」という印象になってしまいます。食感が柔らかいお米の場合は、塩の粒ができるだけ細やかで、しっかりお米に馴染んでくれるタイプを選ぶとよいでしょう。
お米に含まれる甘みや旨味と同じ甘みや旨味を持つ塩を合わせてあげることで「究極の塩むすび」の組み合わせに近づきますよ。

“究極の塩むすび”を作るなら、お米と同じ甘みや旨味を持つ塩がおすすめ

塩加減はシーンに合わせて選ぶ

どの塩を使うかも重要ですが、塩加減ももちろん大切です。平均は、約120gのおにぎりに使う塩は0.6g前後程度とごく少量です。ただし、運動会や部活動、真夏などの汗をたくさんかくシーンで食べる場合は、ちょっと多めに塩を使うのがおすすめ。汗とともに塩分が失われるため、少し濃い目の塩づかいが「ちょうどよいおいしさ」に感じられるからです。お米もお塩も、生産者さんたちが丹精込めて作ってくれたもの。せっかくならば調理にもこだわって、最高の塩むすびを楽しんでみてください。

今回ご紹介する商品はコレ!

究極の塩むすびを楽しめる「ごはんのしお」
¥1,512(税込)

塩の達人・青山さんが全国各地の塩の生産地を訪問してセレクトした、ごはんに合う塩が詰まったセットです。1つの1つの塩の説明やおすすめの使い方が記載されたパンフレットも入っているので使いやすさ抜群です!いろんなお米に合わせて、自分にとって一番おいしい塩むすび探しをお楽しみいただけます。

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Third Rich Salt Konayuki(浪越弘行/香川県)

Third Rich Salt Konayuki(浪越弘行/香川県)

料理人が生み出したおいしい塩

相性の良いお米:柔らかめでさらりとした甘みのお米

地元の食材を活かした料理で好評を博す料理人の浪越さんが作り出す塩。「海水を調理」してできあがった塩は、しっかりしているけれどもしつこくない甘味と旨味があり、口溶けがとてもなめらか。塩むすびにする時には最初にお米に混ぜてしまうのがおすすめです。

浜御塩(株式会社白松/長崎県)

浜御塩(株式会社白松/長崎県)

すべてがほどよい

相性の良いお米:硬めでさらりとした甘みのあるお米

対馬の海水を原料に生み出された塩で、私が最初に「これ、ごはんに合うなあ」と思った塩です。塩そのものの味わいはバランスが良いタイプで、お米の味わいをしっかり前面に引き立ててくれます。少し粒感がありしっとりしているので、塩むすびにする時には手塩にするのがおすすめ。

カムイミンタルの塩 淡雪(東洋炉材株式会社 工房帆/北海道)

カムイミンタルの塩 淡雪(東洋炉材株式会社 工房帆/北海道)

まろやかで上品な甘味

相性の良いお米:硬めでずっしりした甘みのお米

自然豊かな山の栄養が十分に注がれた北海道洞爺湖町の噴火湾の海水からできた塩。非常にまろやかで強い甘味がしっかり感じられます。余韻が長いので、硬めのお米をしっかり最後までアテンドして引き立ててくれます。手塩にしても良いですし、水に溶かして濃度20%ほどにし、手水として使用するのもおすすめです。

弓削塩あまも塩(特定非営利活動法人弓削の荘/愛媛県)

弓削塩あまも塩(特定非営利活動法人弓削の荘/愛媛県)

甘味と旨味が仲良く同居

相性の良いお米:柔らかめでずっしりとした甘みのあるお米

かつて塩の荘園として栄えた弓削島に伝わる製塩を復活させ、地元で獲れる「甘藻(アマモ)」を海水と一緒に炊き上げた藻塩です。上品な甘みと旨味が同居していて、塩自体が上質なお吸い物のような印象です。粒が非常に細かく口溶けも良いので、お米に先に混ぜ込んで使うのがおすすめです。

日本と世界の塩の図鑑

しっかり塩を勉強したい方は、こちらの本もおすすめです。

日本をはじめ世界各国の245種類の塩について、詳しい説明やおすすめの使い方が記載されている他、塩の豆知識や基礎知識を学ぶことができます。

日本と世界の塩の図鑑

¥1,650(税込)